新章 新世界
「全く自動操作だし、揺れもGも殆ど感じなかったっす。でも、退避しましょうと言った途端に感じたGは、強烈だったです」
「済みません。こちらの計器に相当の異常が見受けられたので、緊急ボタンを押しました」
「何かあったと言う事ですね?それは」
「ええ・・ありました。しかし、まだ数値化出来る時間もありませんが、良ければ犬達と一緒に聞いて貰ったら」
「はは・・犬達は退屈しているようですから、地下通信路を自由に走らせときますわ。時々まだ未解明な通信路を発見してくるんですよ。『銀・楊!』、自由に走って来い」
「ワワン!」
犬達は元気に走って行った。眼を細めてその様子を見るケンシン開発室部長にも、この前に『愁』の第2子、『玲』と言う雌犬がプレゼントされている。眼に入れても痛くない程可愛がっているようだ。まだ子犬なので、愛情を持って接すれば、きっと良い相棒に育ってくれるだろう。
「じゃあ、犬達も新たな探索に出かけたので、3人で少しお話しましょう。この空間はシャットアウト致します」
そう言うと、一切外部からは聞こえないようにそこは閉じられた。
何だ・・ものものしいなとリンが思ったが、次の瞬間硬直した。中には神野元老が座っていたからだ。
「どうした、リン」
シンがリンの背中を押す。
「い・いや・・あの」
「まあ、そんなに堅苦しそうにしないで、楽にしたまえ、リン君・・あ、いや訂正する、リン班長」
シンがおちょくる。
「ふふ・・神野門下生の中で、一番手を焼かせた問題児だからなあ」
「な・・そ・そんな」
「良い、良い。ざっくばらんにいきたまえ。4人で十分のスペースがある。私はケンシン開発室部長に、シン首班が旧R国の今は陸続きになっている国後島に行ったと言う事で、何か知り得る事を教えてくれないかと言う事で、ここへ招かれた。既にシン首班にはDVDや口頭でも、またつい最近も黒川主査と少し話もさせて貰ったが、実際当時の状況であるとか、国同士の領土問題が起きていた頃の話になると、生まれても居ない古い事だからね、十分には答えられないとは思うが、しかし、シン首班に全て伝えきっていない部分もあるだろう。オブザーバーとしてここに今居るんだよ、リン班長」
「は・はい」




