新章 新世界
ケンシン開発室部長は、これにかなり集中して共に監視してくれている事が分かる。それだけシン達を信頼してくれている証左だ。そして共に実践活動をやってくれているのだなとリンも思った。
そして、犬達も乗り、そのままの位置から、今度はゆっくりと上昇して行く。音も全くしない。これが発明と言わずに何と言えるだろうか。しかし、旧時代の遺産であり和良司令官の最大の発明と言われる光無線ケーブルの仕組みを利用したものだ。原理は分からなくても応用は出来ると言う証左だ。ここまで短期間に人まで乗せ時速3000キロまで速度も上がり改良して来たその意義は大きい。リニアモーターカーの発想だと言うが、やはりそう言う応用をも和良司令官は考えていたのかも知れない。そんな事を頭の中でフル回転させながら、シン達は、上空から靄を眺めて行く。かなりの高度まで上昇すると、やや靄が薄れて来て時折雷光のような音はしないまでも、ぴかぴかと光り、その光は線状に伸びたり、球状の形になったり、また消えたりする様子が陸上に居るより良く見えた。
「色んな形をするんだな‥プラズマって」
リンがぼそっと言う。
「相当の高温のようだが、物質的密度は低いようだ、だから重さは無いし、物質を透過すると言う、これが幽霊電子、粒子と言われているものらしい。また強力な磁場により人間の脳内に幻覚を見せる。それが幽霊とか霊魂の正体なんだと言う」
「つまらない話だけどさ、人間が死んじまったら、その意思とか存在とかは全く消えちまうのかな」
「ああ・・そうは言われているが、その手の研究は22世紀頃には消滅したようだ。そんな悠長な研究をさせる程政府に余裕は無く、人材も不足し、自国を守護する為の全て国費を投入した訳だから。と、言っても全ての国家予算は、国民には与えれなかった時代だ。その代り居・食・住は不自由のない生活だったらしい」
「それが、人類退化への拍車か・・俺はこの手の研究もして欲しかったと思うよ、シン・・犬達も何か聞こえている。俺にも唸り声のような音?声・・さっきから聞こえるんだ」
「そうか・・リン達には感じるんだな・・何かを。きっとここには何かやっぱり発生源がある。ゆっくりと今も上昇中だが、俺の眼にも靄の切れ間が見えて来た。靄の上空は、青空だ」
「真っ青の空だな・・大きな・・これって円球状の靄がゆっくり反時計回りに動いている?もしかして」
リンが何かに気づいた。シンも同じくそのように見えた。
「この中心位置もインプットされただろう。やはり上空から見るのと、地上から見るのとでは全く様相が違う」
「あ!何か中心から真上に光の帯が昇って行くぞ」
リンが小さなその現象だが先に気づいた。




