新章 新世界
「リン・・靄に動きがある。そして、時折光っているのが分かるか?」
「ああ・・時々光っては消えるが、何らかの発光現象なのか?これは」
「俺が思うに、プラズマだと思うんだ」
「プラズマ?」
「ああ・・高温プラズマは、人間の脳に強磁場を起こし、その結果、超常現象と言われる幻覚を起こさせるようだ」
「危ねえじゃんか、それなら」
「俺達は、電磁場遮断スーツを着ているから、犬達の反応を見ていろ、人間の五感より遥かに犬の方が高い。まさか犬が幽霊なんて見る事も無いだろうしな」
「ふ・・そりゃそうだな。見慣れぬ音とか、自分より遥かに強者や獰猛な猛獣ならまだしもな・・『楊』は、大猪と何度か闘った。一度も尾を巻いた事はねえよ」
「それは『銀』もだ。何頭か倒したしな、1対1で」
「それはすげえな。やっぱり『銀』だ。『楊』は、すばしっこさでは負けないがな」
「おいおい・・犬同士の比較して対抗意識を丸出しにしてんじゃねえよ。先の5匹は俺達と一心同体。どいつもすげえよ。並みの犬なんて眼じゃねえからさ」
「ふふ・・それはそうだな」
リンのご機嫌が良くなった。その点では第14班の全員が犬達とのコミュニケーションは抜群にあった。
そのプラズマらしい光は不定期で、特に危険な事は無かったが、どうにも不明のまま3日目を迎えた。そこへケンシン開発室部長から連絡が入った。簡単なLAN形式の無線が近くの通信路まで通っており、短距離なら届く無線のLAN形式でMSI飛機のモニタ―に映った。
「いかがですか?シン首班」
「何とも・・余り動き回るのもここの靄に阻まれて、プラズマが光っておりますしね」
「プラズマ・・だとは私も思いますが、恐らく近くに磁場を発生させる何かがあって、そこに大気中の陽電子などが反応して、発生しているのだと思われます。我々には、不可視光線は見えませんが、機器ではそれがひっきりなしに観測されています。波状に出ているのが確認出来ます」
「それは今現在もですね」
「はい、24時間休む事なくです。どうですか?シン首班、陸上では埒があかないのではありませんか?」
「ええ・・どうすべきか判断出来ずに、今の状態で機械上観測しているだけです。犬達にも特に変わった様子は無いです。ここへ到着した時には低い唸り声をあげていましたが、今はいつもの通りですが、あちこちには全く動きません」
「それが、何か危険と感じるのでしょう。私もそれが何かは分かりませんが、どうでしょう?上空1000Mまで上がって見ますか?コントロールは、こちらで致します。少し気温が低くなるかも知れませんが」
「じゃあ、そうしましょう。上着は持っていますので、着こんで上空から見るのも状態が分かりますしね」




