未来とは
「我々もそうですよ。与えられた作業をこなす事が全てでしたからね。余計な情報や知識等は不要だと言う流れでした」
とにかく、今を直視し、自分達のやれる事をしようと確認し合った二人だった。
その2人に甲高い声が聞こえた。初めてオオコウモリの個体を捕獲したと言うのだ。二人は駆け足で、その場に向った。
「む・・むむう・・こんな・・姿だったのか。確かに巨大だ・・それに異様な顔付きをしている」
「近づかないように!」
シリマツが、集まった者達に厳しい顔で手を挙げた。用意して鉄製の檻にオオコウモリは入れられ、すぐエンジン車に乗せられ、ドームに向って行った。
シリマツが、実動班を集結させる。
「今回は、マコト副長提案により、ケン君と共同でとうとうオオコウモリの一体を捕獲する事が出来た。この100年間、誰もが微かな存在を一部の情報と知ってはいても、姿さえ殆ど最近になるまで不明の生体だった。君達に披露したのも最近だからね。それは、我々人類の科学が数百年も後退したのと、ドーム外活動が視野に無かったからでもある。更に・・言えば、核爆弾は確かに使用されなかった。原子力発電所は、世界各国から消えていて、太陽光や、風力、或いは他の手段によるクリーンなエネルギーとして電力が作られていた。しかしながら、その原子力発電所や、核兵器が安全か?と聞かれれば、発射ボタンが停止されたとは言え、核分裂は今も続いているだろう。その施設は、放置されたままなのだ。制御も不能な状態にあると言う事になる」
「では!放射能の危険性が?」
「うん、当然そうなる前に、500年、1000年先の事まで想定し、核燃料は排除されてはいるが、それが安全と言う事では無いのだよ。どこかでやはり放射能は、この地球全土に放出され続けている。半減期まで数十万年と言う途方も無い時間が掛かるんだ。又、自然界には核燃料となる資源もある訳だからね。それは粉々に砕かれようが消えはしないんだよ」
「全ての国が、技術の問題もあるでしょうが、そんな先の施策まで出来ては居なかったと言う事でしょうか?」
オオコウモリの捕獲で少し湧きたつメンバーに、冷や水を浴びせるような言葉だった。そして何故今そのような話をするのかさえ、シン達には分からなかった。真意が知りたいのだ。
「小出しにこう言う話をする訳ではないが、過去資料が非常に膨大にあり、その過去にはAIや、超大型CPによるもので、膨大なデータが即座に分析も出来たが、この孤立したドーム内で、それも老朽化し、今にも尽きそうなPC端末では、分析にも相当時間が掛かるのだ。そして、懸命に勿論やってはいるが、一度に複数な事を実行出来ないのも事実なのだよ。その事をまず説明しておこう」
「はい・・」
何を次に言い出すのだろうか、シリマツの険しい表情を見ても、本来オオコウモリ捕獲を喜ぶべきだろうと思った。どうして、こんな顔をして話すのかと、その次の言葉をシン達は待っていた。