新章 新世界
「え・・おいおい・・おーーい・・ち・・本当に行っちまいやがったぜ」
ランの眼が点。でも、何だかリンは嬉しそうだ。
「せっかくだしな。じゃあ、行くか。大体のナビは俺がしてやるぜ・・と言うか、これって・・ひょっとしたら・」
言いかけてリンは思った。あ!これも同じMSI飛機と同じ仕組みなんじゃないかなと・・じゃあ、本当は操縦しなくても、目的場所に行ける?その時声が聞こえた。
「ラン、リン・・潜水艇の中は狭いが、寝ていてくれても良いぜ。黙っていても明日の昼には対馬に着く筈だ。五島列島福江島、壱峻島も通るルートだからな」
「あーーあ・・見事に試験乗船させられちまったぜ。もしもの時には、高速で逃げられる安全スイッチもどこかに・・あった。リン、見事に策士に嵌められちまったぜ」
ランが言うと、リンは、
「ふふっ・・俺達の安全をやっぱりシンは一番に考えてくれているのと、ランちょっとは胸を張れ、お前の操船モードも、きっちりデータ化している筈だよ。無駄な事は何一つやっちゃいない・・と言うか、俺が思ったんだけど、この生体を土竜エイが食うんじゃなくて、土竜エイの巣穴に食指を伸ばして、こいつが食うんだよ。毒針なんてあっても無くてもこいつには関係無い。痛感神経だって無いだろうし、つまりさ・・食虫植物のようなものさ。こいつを人間・・つまり和良司令官が食うつもりだったんだよ、恐らく」
「逆?でも、ここまで巨大にするって、1人が食う量じゃねえだろうし」
「まあな、刻んで白頭に食わす事もまた出来るって話なら納得するか?」
「する・・それなら、分かる」
ランは頷いた。それこそ自分が思った事以上の証左であろう。つまり、シンはその事のほぼ確信をこの時得たと言う。土竜エイは保存食のようなものだ。もう和良クラゲと呼ぼう。どんな形になっても、食のピラミッドの頂点は和良司令官。その食性を循環させる研究所を既に立ち上げ、既に使命を終えたから瀬戸内研究所に施設を移した。そこでは、今度は生き残った第1ドームの者達の新たな食として、擬ガジュマルの木や、ほぼ思い通りになった山切りの木、大葉の移植をすれば、これで食の確保は十分だ。これが自分の完全体を完成させる為の延命策なのだった。これをもっともっと自分以外の者に応用していれば、和良博士と言う人類有史以来の大天才は、歴史に名を刻んだ人となっただろう。




