新章 新世界
「ふ・・お前だから、こんな操船は一発で出来るとは思っていたが、とても操縦も手慣れたもんじゃねえかよ」
「こんなゲームがあってな、俺は達人レベルに一日でクリアしちまった。多分、大昔に空を飛んでいたジェット機・軍用機・ヘリコプターも即、操縦が出来ると思う」
「ははは・・まさにヲタクだよな、お前に操船を任せるが、この生体には余り近づくなと言う事だ。全体の姿をまず見よう。けど、でかいなあ・これは」
ランが自在に操船しながら、全体像を映しだして行く。かなり海は深くなっていた。水深200Mまで達した時に、かなり強い海流があった。ぐらぐらと潜水艇は揺れる。しかし、海の中は透明度も非常に高く、海底もおだやかな砂浜になっていた。その2人が同時に声を上げた瞬間だった。
「うお・・胴体がしっかり砂の中に埋まってやがる」
「ラン・・お前の予測かどうかは分からねえがよ、これって例えばイソギンチャクや、サンゴのようなものか?ひょっとして」
「胴体が砂の中と言う事は、やっぱり海の中に生える海藻類のようなものじゃねえのかな。動物と言うより植物に近い・・なら、これが和良司令官の開発した海洋生体様植物なんじゃないのかな。海面までの高さ200M、幅推定300M、無数の食指のような枝がある。海中には海洋生物の姿は皆無。海藻も何も生えていない」
ただちにこのデータはキョウ班長の元に鮮明な画像で送られる。なら、食指のようなものは何だろうと思っていたら、しゅるしゅるとそれが伸びて来たでは無いか。
「ラン!全速後退!」
ランは、リンの機転の声で咄嗟にエンジンをフル回転した。その食指の動きは早くなく、丁度底付近で、海流に乗った形で逃れたので、この食指には捕まらなかったもののアクアラングで良く潜って調査しなかったものである。
「ふぃ・・やはり固定概念は捨てなきゃな。襲って来たぜ・・こいつは」
もうかなり離れた砂浜に浮上し、そこでダンを呼んだ。ダンはこの画面を見つめており、すぐさま駆け付けた。
「危なかったな・・やっぱりこれは危ない生体だったようだ。けど、大体の姿はお陰で分かったよ。すぐ分析にかける」
「分析にかけるって?サンプルは俺達は採っていないぜ?」
「いや、俺が空から、ドローンで銛を飛ばして、食指の1本を釣り上げた」
「何・・そんな事をやったのか」
「ああ・・俺も今回はミッションの一員だった。ところで?ラン、その潜水艇は乗り心地はどうだったよ?」
「ああ・・操作しやすいし、観察だけだったら、快適だったぜ」
「そうか・・それを使って対馬の海もやって見るか?もっと色々分かると思うし、今度は襲って来る生体も居ない筈だ。何ならそのまま乘って行けよ。2日間は電動エンジンで動くらしいから、ゆっくりとリンと一緒に楽しんで来い。食料も渡しておく」
そんな事を言って、ダンは、潜水艇の2人にぽんと食料を渡すと、さっさと戻って行った。




