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シンカラス  作者: 白木克之
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新章 新世界

 シンが身を乗り出した。神野元老は笑っている。元老と言う年でもないのだが、この新組織の象徴になって欲しいとシンが願い、そう呼んでいるのだ。今になって付け加えるように言うが、精神的支柱と言う意味において、やはりそう言う象徴は要る。


「したよな・・それは、私も正直驚いた。これだけ完全な方法で、30年と言う歳月を掛けてやっと自分が乗り換えられる個体に交換出来る筈なのに、クラゲがそこで登場すればね」

「じゃあ・・黒川主査はそうなる事は予測し得なかった?」

「十分には分かっていなかった。変化が起きたのは、数か月前の事だ。殆ど和良博士の個体は完成していて、もう最後の段階まで入っていた。培養液も純度の高いもので、そこに不純なものも入る余地はない。光ケーブルで発信されるシステムに異常も無かったし、私が直接手を下す事も無かった。この30年、私は孤独で寂しかったと言われるだろうが、楽しかったよ。自分の研究に打ち込めて、この変化を毎日眺めて来たんだ。それに神野元老も加わって、そこまでの統括をして来たし、君達が通った特進路は、和良博士が全く知らないルートだった。無線の光ケーブルでもそれは追えないものだ、即ち自分で開発した旧ケーブルだ。そこにチェックを入れる必要は無かったからね」

「あ・・成程・・細かい事は後々聞こうとは思っていましたが、今聞けました」

「だから、定期的に時折会って相談していたと言う事だ」

「そうだったんですね・・」


 シンは納得して頷いた。


「さて・・そのたった一つの万分の1のバグ=遺伝子エラーなんだが、ここは聖域でもあった。つまり、これは消去したり、いじってはいけないんだ。完璧であろうとする人間或いはAI遺伝子繁殖には、それがある。私が危惧していたのはそこなんだよ。この99.999%で例えば、新首班、コウタ研究所長なら収める所を、彼は完璧主義者だ、それを許容出来ないんだ。だからこそ、最後に見たのは自分だ。自分自身なんだよ」

「そうですか・・そう言う事で」

「シン首班・・これから色んな事が出て来るだろう。だが、理想を求めても、それに固執し、そこを目的にしてはいけない。君が自然にできている、ケースバイケースの考えや柔軟に対処する事こそが、新世代を創る道だと我々は思う。こうして、体を得た。和良式長寿法は喜んで採用させて貰ったが、やはり私達には永遠の命等は欲しない。この研究は封印する事の同意も貰っているし、方法は地下奥深くに廃棄した、真似ようとも恐らくそれを再現できるこの先AIが復活しようとも不可能だろうし、記憶光子の呼び出しも本人の死去と共に、始動出来なくなった。永遠にこれが呼び出される事は無いだろう。君にだけ伝えるよ、今ここで」

「有難う御座います。深いご存念に敬意を表すると共に、固く誓います」

「頼むよ、シンリーダー」

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