未来とは
「いや、俺が採るんじゃない、ケン君考案でラン君仕様の網を使うんだよ」
「あ・・成程、仕掛ける訳っすね」
「君の、カーバイドの仕掛けも借りるよ、色々改造してくれたんだったね」
マコト副長は流石に副リーダーだった。それぞれの個性を把握し、彼らが優秀で様々な分野に精通している事も知っていた。
「え・・はあ・・まあ・・最近は結構古い時代の古い機械的なものがデジタルデータで見えるんで、前時代のものとして博物館等では保管もされていたようですが、今となれば、ドームの中のだだっ広い道と同様に、当時走っていた電気自動車等も全く見る事は出来ません。電力の供給話も出ましたが、カーバイドが色々役立つと思って」
「うん、色々応用を考えて見た。自分も応用学と言うのを専攻していたからね。このカーバイドがもっと活用出来れば、連続吹き矢発射装置も可能だと思うんだよ、限られた資材で、こちらは武器にはなりもしないけどさ、何はともあれ、機関銃でオオコウモリ等を攻撃したら、それこそ泣かぬ子を起こすと言う古語の通りだろう?音が出ない、そして発射スピードをオオコウモリ以上に出せないと、今の人力発射などでは、網などを仕掛け、追い込んで一頭でも動けなくして捕獲する事が重要なんだと思うんだよ」
「はい、協力は惜しみませんよ、エライ班長やシリマツ官吏も認めている事っすから!」
自分の開発したものを採用してくれるのは嬉しい事だ。喜んでケン・ランはマコトに協力して作戦を練るのだった。
こちらも、既に動いていた。
シンとサテン・ウテン双子のセメントを利用した、基地作りだった。これは既に5キロも通路が伸びているので、その周囲に、500メートル放射円状に通路を伸ばし、前線基地を作るべきやっている所だった。既に、ドームからは、ここまで構築物が100年以来の建造物として登場したのだ。画期的な事だと言える。ここから、ドームを取り巻く周辺の観察を行う事が出来る。500メートル円周の基地はシン達実動部隊のこれから拠点になるのである。彼らの画期的な提案により、通路には、バイオガソリン燃料の駆動車が慌ただしく動いている。労働力が限られるので、非常に有効な活用となり、これまで作業班以外の部署の者も、ドーム外に出る事は無かったが、顔を出すようになっていた。
「ここが実動班の最前線基地ですか。皆さんが色々提案を出し、行動されているご様子に頼もしく、又我々が生まれて初めてドーム外の景色も見る事が出来ました」
そう言ったのは、生物班と言う研究部リーダーの荒井薫と言う者だった。役職は副主班と言うらしい。初めて見る顔だが、好感が持てた。優秀な人材には間違いないし、物腰が非常に柔らかく、初対面のシンや、少し気難しい所もあるサテン・ウテンとも、すぐにこにこと話をし出したからだ。