第五章その二 とうとうここで正体が!
「マコト実行隊長!そう言う事です。丸裸にしても構いませんので、そのシリマツ培養体の服を脱がしてください」
「おうっ!」
ずっとシリマツ・・既に培養体とまで言われた。銃口を向けられたままだった。シンは完璧にこの動きさえ封印したのだった。最後の切り札さえ失われた和良司令官は、もはや今度こそ観念したようだ。しかし、それでもランは銃口を和良司令官に向けている。射殺命令まで出ているのだ。どう足掻こうとここで抵抗したら、余命の事まで言われている。そして、それは突き止められた真実だと言う事だ。
「さて・・まだ瀬戸内海研究所内部に入る訳には参りませんが、この長話をしているのには、貴方と言う個人が歴史上のとんでも無い犯罪者・テロを起こした人物だと特定出来たからです。その人物を裁く事が出来るのは、もはや我々しか居ない。これだけの準備をして瀬戸内海に海洋生物を蘇らせ、佐賀の海、T国の猿人、対馬の土竜エイや異質な海洋生物、擬ガジュマルの木等疑問は、無数にある。学者としての貴方は、我々を遥かに凌駕するその超天才的頭脳で、数々の事をやってのけた。一部、貴方の言葉の中に未知のウイルスの事があった。それが、もし電磁パルス攻撃と言う手段になったのなら、また1億人まで激減した人類の未来を危惧しての貴方の発案なのだとしたら、希代の英雄となれる実行だったのかも知れない。そこを聞かせて下さい」
「まさに・・意図はそこにある。また無数に上空に飛び交う偵察・攻撃型衛星の破壊だ。また核を搭載した衛星など、地上に加えて地球上空にも無数にあり、それも地球人の自滅の脅威が迫っていた。そのままでも世界は、確実に100年、200年の間に滅んだのだよ」
「その辺は理解致します。正当性を同意する訳では無いが、それは実行出来る者が居ない限り引き返せない、または停止出来ない状況に陥っていたと言う事ですね?」
また敬語で使い分けて話をしているシンは、ここは学者としての偉大な存在に対する敬意を払っているのだ。
「その通りだ。私の提案など誰も耳を貸そうとはしなかった。日本は唯一国、鎖国政策へ進み、自国の繁栄のみ願い、そして当時において500万人まで人口が減少している事にも危惧していた、だからこそ人口繁殖と言う分野には力を入れていた。シリマツ培養体と言ったが、AIを駆使せずともその施術が出来る者が、ようやく第2世代に登場したので、彼はそれを促した。これは誰しも反対などせぬ事案だからね」
「そこも、何故急にそんな事を言い出したのかとは疑問もありましたが、確かにそうですね。5万人を切る寸前まで、その日本の鎖国政策までも含めて、電磁パルス爆裂が予想以上に大きかったのは、ミスと認めますか?」
「確かに予想外だったし、大地震・大津波が遥かに予想を超えていたと言うのも人間が抗えぬ事だ。今もなお激しい火山活動を続ける南九州を、実際に見て来た君達だからこそ、その辺は理解出来るだろう」




