第五章その二 とうとうここで正体が!
「そっくりその言葉をお返しします。人類がもはや種としての自助繁殖すら出来ないような世界にしたのならば、潔く抗わないで、その死を受け入れるべきです。でしょう?そう言って貴方は、第1世代の50名の、優性遺伝子を持つ日本人最高頭脳達を、自死に追い込んだ。確かに自ら手は下していないのでしょう。しかし絶望感を与え続けた。言いましょうか?大葉の成分ダラマンカはオオコウモリの忌避成分・・しかし、これは光分子ではバラリンには変化しない。大葉を開発したのも貴方だ。この成分は、あるものを混入すれば、バラリン及びうつ病を発生させる高たんぱく質成分が出来る。これは栄養分が無くなると言う最近の報告に、大きな嘘が入っている。それを流したのがレンジだった。疑いは一気に増幅した。分岐点はまさにそこにあった。キョウ班長は、俺にそっと教えてくれた。栄養過多で糖尿病によく似た症状になる。それが、このバラリンと同時に出来る作用だと。何故か一方のその情報は、自分の所に届くまでに伏せられていた」
「・・・それが何故分かる?」
和良司令官の表情が。微妙に変化した瞬間だった。今度はシンに代わる。
「レンジと言う名前で自分達と行動するようになって、自分達はサテン・ウテンにもそうだが、第14班しか分からないアイコンタクトと、リンとは音域が通常の者には聞こえない単語の暗号を決めていた。それは、もうずっとやっていて、互いに暗黙の了解だった。今回この瀬戸内海海洋研究所探索にあたり、一切その信号を絶つと取り決めた。それこそ何か考えているなと思わせる意思においてだった。犬達には、勿論そんな暗号など通用はしない。普通に動いて貰ったし、実に自然な形で十二分に働いてくれた」
「そこまで君がやると言うのは分かってはいたが、相当な用意周到じゃないか、それは。レンジである私が報告しなかったと言うのは、そんな今重要では無い情報を伝える必要など無かったからだよ」
「そうでしょうか?でも、先に言いました。貴方がやらねば、自死など選択する筈も無い、今この世に生き残り生を授かっている者達が、そこまで悲観する訳が無い。生きると言う目標を掲げて、この第1ドーム研究所こそは、日本最後の砦であり最高の頭脳や技術者が集結していたんですから。第2世代は実にその時は15歳だった。俺達第3世代が15歳頃から訓練を受けた全く同じカリキュラムでした。貴方はその時第1世代の中で居たんですよ。既に第2回目の若返り手術を受けてね。コウタ班長・・脳は変えられないが、つまり体は変えられるよね?整形など思いのままだ。そんな施術位なら現在の技術でも出来る。それが可能な医師は、少なくても5名は居る。そうだよな?」
「ああ・・居るよ。脳及び主要動脈接合、頸椎、神経、血管修復・・そこを注意すればそのまま体を取り換えれば良い。だが、それも自身の培養体でね、だから拒絶反応が起きない」




