第五章その二 とうとうここで正体が!
「なら、それで地上の動植物、建造物などが壊滅したのもその影響か?」
「影響だ。しかし、その前に私が何度も指摘して来た数億年単位の地殻変動が起こっている。世界のそのものは既に壊滅的被害を受けている。話が戻れば、その制御出来ないAIが誤作動を起こす事にも異論が生じなくなるが?」
「詭弁だ・・問題をすり替えている。人間がボタンを押さない限り発動しないと言っている。すなわちその混乱に乗じて、やはり誰かがボタンを押したと言う話に聞こえるが?」
ぱちぱちぱち・・とランは、シンのやりとりに拍手を心の中で送っていた。
「それも強引なこじつけだ。ならば、その大地震・大津波の発生時期と電磁パルス爆裂の発生した時期を証明しなければならなくなる。そして殆どの国の都市機能が破壊された中で、地下都市依存型社会構造が、それを保てると言う保証は何も無い」
「何もない・・確かに証明できるデータも何も無い。ところがそれが問題であって、本来そこには全ての情報が詰まったAIが破壊されれば、その情報は壊滅する。同時に世界の秩序も破壊される。それが殆ど同時に起こったとすれば、何故この国のドーム周辺施設が残り、瀬戸内海圏の海洋生物が残り、対馬及び通信路が残っている、矛盾を感じるが?」
「それも夢想論・・頭の中での何の根拠も無い話で、君を見て来たが、仮想や極論、或いは勘による突発的行動が非常に多かったね、それが今の言葉通りだ」
シンが劣勢に・・確かに和良司令官の反論の方が勝っていた。
「でしょうねえ・・そうだと思うが、その珍妙な生物群が、実は色んな事を証明してくれつつあるので、紹介しましょうかね」
ここで敬語になる。そこまでは完全にタメ口だったからだ。だが、レンジと言う班長の実際見た眼と公表年齢は25歳だ。シンも今は26歳。一つしか変わらないし、ここまで少なくても上司の立場だった。
「お願いするよ、今回は教授願う立場だね」
こっちは、和良司令官の若返りだともう公言した以上、素性を隠す必要も無くなった。と言うよりはっきり暴露され、認めざるを得ない状況に追い込まれた形なので、言葉使いも上から目線のような感じだ。だが、確かに遥かに年上なのだから、それは当然か・・。
内心先ほどまで気の合う仲間だと認めていた・・否、サテン・ウテンは知っていたが、第14班の他メンバーと、このコウタ班長・キョウ班長にとっては、突然昨日の事だ。シンからそれを告げられたのは・・しかし、それにしてもどうしてこの距離を、しかも瀬戸内海洋研究所の所在さえ分からぬ段階で、閉ざされた壁の向こうに居たのか、マジックのような話なのだ。シンは、それをまだ明らかにしていない。




