第五章その一 新天地!
「つまりな、遮蔽版の役目の事をお前は説明をしてくれたが、天井が開いているのは、空気の流れを止めない為じゃねえのか?なら、素材なんて簡単なものでも良いんだと思う。これは、人為的に緊急では無いだろうが、閉鎖・或いは使用しないように仕切りを設けた物だと俺は判断した。勿論違っているかも知れない。現場の判断だからな、ここに資料がある訳でも無いからさ」
「じゃあ・・一つ聞く、そう思った根拠とは?最近サテン・ウテンと一緒にやるようになって、確かに学ぶ事も多い。だから、そこを教えて欲しい」
*レンジの性情は、もうシン達も知っている。そして、何故シンがこの現場の真っ先にサテン・ウテンを呼んだのかもそう言った現場の知識が優れているからだ。所謂技術屋と呼ばれる人間は、設計図通りに行かない場面にしばしば直面する。設計図面等単なる参考に過ぎない・・彼らは勿論指定された図面をひっくり返す訳では無い。しかし、現場の作業の中から常にあらゆる知恵や工夫を駆使して、その建造物を仕上げようとする。例えば、無駄な時間であろうともそこへ手間を掛けねばならないと思えば、時間等賃金など関係無くやる。現場で言い合い、喧嘩する事などしょっちゅうだ。そうやって、自己の技術を磨いて来たのだ。それこそ、その気質こそこの二人にはあるのだ。一番シンがそれを知っており、これまでも高く評価して来ていたのだ。
「これは、殆ど今では見かけなくなった、強化ウレタンと言う軽い素材だ。素材に塗布したり、劣化した素材に吹き付けて強化する。確か・・偽山切りの木がこれと同じなんだよ。だからすぐ分かった」
「ほう・・サテン。それを調べていたのか、既に」
「ああ・・何であんなものがあったのか、今でも分からないけど、上空をダミーの木にして監視する役目なら良く分かるさ。同じ素材と言う事は、この壁の後ろにある通信路側を監視する目的があったんじゃ無いのか?その為のダミーだと思った」
「ダミー・・じゃあ、本来の遮蔽では無く?」
「どうだ?この壁を叩いて先に行くか?引き返すか?光ケーブルは4巻、20キロメートル分は今ここにある。空気が通っている事は明白だ。また『伴』がここを超えたのなら、奴らを呼べるか?ラン」
「ああ・・このPCのボタンを押せば、首輪についてある信号が反応し、犬達はすぐ駆け付けると思う」
「じゃあ、シン副首班、許可を得たい。ここを壊しても良いか?駄目か、判断を願う」
「許可を得たいって言っているじゃん、やる気まんまんじゃん」
ランの眼が点・・くくっとシンは笑い、




