第五章その一 新天地!
「俺も通信路については、素人だし十分素材の事についても知らないけど、この壁?遮蔽版とは違うし、周囲の壁とも全く違うんだよ」
「俺も見ている・・レンジ、ちょっと離れていろ」
サテンが、ハンマーをリュックから出して来た。
「おい・・サテン」
ランが突っ込もうとするが、ウテンが制した。
「まあ、やる事を見てなって。素材の事はサテンに任せておけ、ルーペがありゃ、大体は目視でも確認出来る」
「へえ・・じゃあ自由にやってくれよ、サテン」
勿論止める気は無い。素材は重要な部分だ。古い構築の通信路である事はもう分かった。ただ、周囲の壁は一度近年に補修されたものか、それは同じものであった。補修用自動電動車が網羅されている通信路を常に修繕しているから、その基本は変わらなかったのであろう。ただ、この壁は不可解なものらしい、尤もレンジの情報によればで、その彼も良く通信路の事が分かっていないのだから、ここまでの応答の話を集約すれば、答えなど出る事も無いのである。
「ふうん・・意外に脆いなあ・・これ。スカスカだぜ?間違いなくマグネシウム合金の類じゃ無い。それに金属では無いようだ」
「何っ!金属以外の物が?」
*レンジが驚いたようだ。それはその筈、そんな情報しか持っていなかったからだ。
「へ・・レンジ、お前は言っても良いか?性格的にきちんとして、身なりもさっぱりしているから几帳面なんだよな。だから、知り得た事を正確に覚えよう、そして伝えようとする。それはそれでお前の最大限良い所だし、長所でもあるんだろうが、ちょっと・・ショウと似ている部分があるよな。教序的って言うのかな、その知識をまず絶対視してから理論を組み立てるんだ。俺達は、土建と言うか建築の事をやって来た。素材を選ばず、まず強度とか耐性とか、所謂テストをずーーっとやって来た。その辺の知識については、恐らく誰にも負けねえって言う自負があるよ、なあ、サテン」
兄弟であるウテンと常に一緒にやって来た彼らだ。その言葉には重みもあった。




