困難に迎え
苦笑いするシン・・しかし、ランが、
「女子にさ、危険な事はさせられないって事だろう?随分危ない目に遭って来て、そんな指名なんて来ないさ、普通はな」
「けどさ、色んな連絡役とか、通信にしたってやる事はある筈だし」
「そう言うのは、つまり上の方針って事になっちまうんだよ」
「だよな・・けど、疑問は疑問で言ったまでだ」
「ふ・・何だよ、お前らは、やっぱりそっちの話になるのかよ」
若い男性だ。当然異性の事は気になるし、たった5万人中で、適齢期・・つまり子どもを得られる年代は、僅かに8000人しか居ないと言う。その中に女子は更に少なく3000人しか居ないと言う話も、つい最近聞いたばかりだ。そりゃ、誰が考えたって、この先に人口が枯渇・消滅するのは眼に見えている。
「いや・・これも聞いた話だけど、世界の文明は100年以前から既に崩壊し始めていたと言う事だ。つまり、一部の富裕層が、圧倒的多数の貧しい者達から搾取し続けた事で、資源の枯渇、食糧の入手など、既にその時から数10年後には崩壊するだろうと言われていたと言う話だ。つまり、それならば、誰かがいっそその文明を消して再構築しようとしたのかも知れないとな。それはつまり、一番人口を多く抱え、或いは狭い国土で資源も少ない国のいずれかだろうとな」
リンの言葉だった。
「つまり、ドームがしっくり来ると言ったが、モデルケースを作ろうとしていたんじゃ無いかなと言うのも一つの論説だ」
「誰かが、ボタンを押す寸前だと言う事も予測した上で?」
「ああ・・それも勿論あるだろう。そこへ一つのケースを持ち込めば100年或いは200年暮らせるかも知れない。その内にそこから何かが始まると言う考えもある」
「だけどさ・・実際は恐怖にかられて守ろうとしていたじゃん」
「それも、有り得る。それは仕方が無い話だ。だって、全部一遍に来たんだからさ、準備も何も出来ていない段階でいきなりどかんだろ?そう言う事になった訳だろう?違うか?」
「分からないよ、でも、現実だけ見たらリンの言う通りなのかも知れない」
「リンの言葉に、俺もある情報を仕入れた。クローンを作っていた技術が日本にあったと言う事だ」
「クローン?」
「ああ・・特定の優秀な者のDNAや細胞を培養して、どんどん子孫を生み出そうと言うような話だ。皮肉な事に、生体武器とも重なっちまうのさ、これが・・」
「恐ろしい話だな・・」
「恐ろしい話だよ。同じ思考の同じ行動をする者ばかりが最後に残る」
「馬鹿だよ・・それこそ大馬鹿だよ」
「その馬鹿をやったんだよ、ご先祖様はよ!」