困難に迎え
ところが、出発直前になって、組織外の天候が悪化した、大雨に見舞われたのだ。当然、工事は中断となる。
「雨には勝てんよな」
ランが言う。シンも仕方が無いよと言うように手を広げた。
「思えば、組織内は全く雨も降らず、風も吹かない。全天候型巨大ドームなんだよな。その素材も、今では手に入らないと言われている。どう言う構造かのデータもこちらには無いんだ」
「だから、その周囲施設で発見出来る可能性もあるんじゃないのか?」
「無いとは言わないけど、これだけでかいシェルターがあって、周辺の規模こそ分からないが補完的な役目の施設か、生産工場か何か分からないけど、そんな所にある可能性の方が低いかもな」
「でも、そこから、日本全国には8か所こう言うシェルターがある。どこかにあると言う可能性はあるだろう?」
「ふ・・そんな先の話より、生体武器のオオコウモリ襲撃を恐れて、どうにか攻撃されないように実動計画をしている俺達が、そこまで考える余裕はねえよ」
「はは・・確かにな・」
ランが、大雨の様子を見ながら、低い声でそう答えた。
シリマツ官吏は、何かやる事があるのだろう、シン達は待機と言う事で自分達の時間を過ごす他に無かった。一人、二人、やっぱりシンを中心としてメンバーが集まりだした。マコトが彼らの直属のリーダーとは言え、シンの所の居心地が良さそうだった。
「ふ・・何で俺の所にぞろぞろと・・」
「へ・・何でだろうな、つい、こっちに来たくなっちまう」
ケンが言う。既にメンバーのスキルなども把握出来ている。かなり彼らとの距離感は感じ無かった。
「リーダーのマコトが居るじゃんかよ」
「でも、こっちの方が俺は良いんだよ」
あははは・・結局この日は5人がシンの所にやって来て、色々話し合った。たわいの無い話である。今の所、見事な形で生体武器のオオコウモリの襲撃は避けられている。なので、少し緊張感的には以前とは違うのかも知れない。が・・聞けば、生体武器はオオコウモリだけでは無さそうだ・・と言うのが、この所の流れになって来ている。確かに考えて見ればそうだ。空を飛ぶ動物だけでも数えきれない種類が居る。何も空を飛ぶのは動物だけではない、昆虫も飛ぶのだ。蝗の話も聞いた事がある。蜂だっている。そんな生体武器だって、実際核より怖いかも知れないのだ。どこにどんな形で現れ、攻撃を仕掛けられても不思議の無い事だ。