第五章その一 新天地!
はははは・・彼らには行動範囲も広がったし、この果樹には非常に栄養分も含まれ、白頭の一群が、それを守護する類人猿風の不気味な生体と争っていた構図もようやく見えて来た所だった。
「成程・・生体武器じゃなく、この動物達がやっぱり実験生体かも知れないってコウタ班長は言うんだな?」
「ああ・・だからこの森林に果樹があると言う事が大きかった。繋がって来るよな、色々と・・」
「洞窟や、様々な所で暮らしていたこの生体が糞をする。そこから種が落ち、育った。それを知った白頭の群れが、それを奪おうとする。奴らがこの対馬を拠点とする構図も見えて来るって事か・・だけど、K国は砂漠のようだった。T国の相当これは奥地になるんだろう?この木が生えているのはさ」
「ところが・・そうは思われていたんだが、最近になって、どうもT国の南側・海岸に近い所らしいと言う事が分かって来たそうだ。だけど、K国ルートだと1000キロはゆうにあると言うから、オオコウモリが満腹して戻って来ても、そのエネルギーを食いつぶすから、そこまで行く必要が無いと言う話だ。つまりは、その一か所だけでは無く、恐らく何か所にも既にその繁殖があると見るが、何しろ、現簡易GPSじゃ、追い切れないようだ。その辺の改良を今ケンシン班長がしている最中らしい」
その話をリンとケンがしているが、共にユニークな発想をする者同士だ。インスピレーションは、誰にも追随を許さない。
「馴致オオコウモリも、そこまではきついか、リン」
「大丈夫だ。もう何度も大陸にも渡っている。俺は思うんだがな、白頭は肉食だろう?左舷の群れなら分かるが、幾ら栄養価が高いと言っても、果樹を狙って1000キロ以上も飛んで行くかなあ」
「だから・・途中でそう言う場所が点々とあるんじゃないかって話だろ?」
「あって不思議じゃ無いし、否定もしない。けど左舷の群れなら、恐らく旧沖縄、石垣島まで塒にしているようだから、そこから大陸までは渡れる。そう距離も無い、3時間も恐らく掛からないだろうから、そいつらが果樹を狙ったんなら、島しょ部に繁殖しているのもわかるさ。けど、白頭の塒には一切そんなものは無かった。ガジュマル風の木は、枝が落ちて海流に乗って運ばれて来たのなら、繁殖するのは考えられるがな、食った痕跡があったか?」
「いやあ・・そんな所まで見てないよ」
ケンは首を傾げた。




