第四章その四 地下通信路
ケンは頭を撫でて頬ずりするのだった。ぺろぺろと舐めて親愛の情を示す『柳』に、シン達も代わる代わる頭を撫でて、ご苦労様と言うのだった。そして、この日は『柳』を休ませる意味でも、また今後の話し合いをする為にもドームの一つで、ショウのデータ照合も含めて、集まっていると、犬達も戻って来た。
「ははは・・何か知らないが、丁度良いタイミングだ。分かっているかのようだな。或いは『柳』を心配して戻って来たのかも知れないな、家族なんだからな」
はははは・・自分達の相棒が横に座り、とびっきりのごちそうも与えられ、良いなあと言うマコト副長に、
「マコト兄、この『柳』に伴侶が出来て子が生まれたら、気にいった子犬を差し上げますよ。レンジにもな」
レンジは、これには反応した。ただ、自分の専門外とはいえ、ここまでの話に殆ど加わっていなかった。それは、ダンにも少し気づかれていたが、そう強いものでは無かったし、不自然と言えるようなものでも無い。彼は第14班外の者だからである。
「うお!それは嬉しい。『愁』もまた子を産むだろうから、そっちの子犬でも良いよ」
シンがにこっとしながら、
「この野郎・・贅沢を言いやがる。その子犬の予約は、エライリーダー、シリマツ官吏がもう手を挙げているんだよ。コウタ班長とキョウ班長。カンジにもな。6匹目がもし居たら、レンジの要望に応えてやろう」
「あちゃあ・・そうかあ・・それなら、『柳』の子を予約しとくよ、ふふふ」
はははは・・一同はこの日はゆっくり色んな事を話し合った。マコト副長は、こうやってシンの第14班は、意見を集約する中で、方向性を決めたり、普段からのコミュニケーションを密にとる事で、互いの考えなどを把握し合っているのだと納得したのだった。
「まず、例のバラリン効果については、相当の結果が出ているようだ。確かにまたたび効果が見込まれると言う事だ。そして、山切りの木にはぶら下がり塒にする事は、スキバームによって皆無だが、逆にある超音波の波長が、上空を飛ぶオオコウモリの好気性成分になって、それがバラリンの微量効果なんだそうだ。これは、やはり日本政府が電磁パルス爆裂後の世界を予測し、移植計画と生体オオコウモリを野外に放す事によって、いついかなる時の為への防御として実行されたようだ。全て遮断された情報の中では、どうあっても一番は、守護と言う事を強く打ち出さねばならない。その為に開発されたそうであって、攻撃目的では勿論無い。嘗ての敗戦国日本は、そうやって守護を第一に自力の防御を磨いて来た。その考えのようだ。また、日本はこの時代鎖国政策で、突き進んでいたからな、整合性のある話だ。そして、サンプルとして送って来た白頭の2頭だが、雄と雌であり、これは夫婦であろうと思うとの話だ。また、オオコウモリには2種の遺伝子交配がテストケースも含めて改良されていて、多産系が、頭金の群れ。もう一種が攻撃型生体武器として、やはり開発されたようだ。明らかに頭金の形態とは違い、攻撃的で粗暴な種であり、DNAも違う。そして、このDNAには蜂のものが組み込まれ、もう一つの方向性として一頭による子孫の群れとなっているのだろう、実際にサンプルを見るまでは判明しなかったが、白頭の方が雄で、もう一頭の大きな個体が雌。そして同じDNAを示す。つまり、この雌の個体が自身が生んだ子の中から子孫を残す雄を選択し、子を多産する。働き蜂のように産む子孫は全て雌だ。その主眼とは遺伝子的にばらつきの無い個体を開発しようとしたものに違いないと言う事だ」




