第四章その四 地下通信路
シンが笑う。そのケンは、目的をもう理解しているのだ。
ランが・・
「先に画像を送って置こう、大丈夫、エイが攻撃的では無い事は理解した。ただし、決して背中を踏むなよ。それが命取りになるかも知れないからな」
「分かっているさ。そして、通信路から有線LANを使いどんどんデータを送れ、ダンの海の解析データもな」
「分かっているさ」
彼らは動き始めた。マコト副長は安全ルートを模索して行く。今の所、転がっているオオコウモリの死骸が海際から無くなっているので、陸側が安全だと指示をする。それも理に適った判断である。シンのその発想がランの思い付きに見事に融合し、一つの方向を出していた。それもそうなれば、霧散した事、白頭と№2と思われる個体の関係、同族食い、攻撃性など殆どの説明がついてくるからだ。このように、シンの記憶力と分析力は誰も足元にも及ばぬものであった。例えそれが違っていたとしても、この限られた砂浜と海洋に、今度は面した生体遺伝子MIX開発班の狙いも見えて来るからだ。既にその施設も発見し、何故か壱峻島通信路の修復を一番に挙げるシンの考えも、その遠望と言うのが見えて来るのかも知れない。もし、その順序が違っていたとしても、これは無駄な作業では無いからだ。その辺も当然計算には入っている。しかし、緻密な計算をしている訳では無い。常にあらゆる選択肢を残しているのである。
海洋生物については、詳しい筈のダンだが瀬戸内で見た種とは全く違うなあと首を傾げていた。ランのデータにも無い種だった。
そして、『柳』が尾を振りながら、ケンの元に戻って来た、犬達はあちこちを走り回っているが、『柳』だけここへ来たと言う事は、ケンが犬達全てに合図を変えているようだ。確かにショウの相棒になっている『柳』であったが、総親はケンだ。この犬族のボスが『戒』であるが、『戒』とケンは強い絆で結ばれている。主人とか従順な飼い犬と言う形では無いから、その辺は自分の群れのボスと同じ目線で見ていると言う事なのだ。その『柳』が、ぱっと飛びのき、唸り声を突如発する。
「が・・がるるぅ・・!」
「お!『柳』じっとしていろよっ!」
ケンが銃を構えバシュッと撃った。そこには、今まで見た事の無い大きなエイが飛び出て来たのである。一発では仕留められなかった。のたうち回り、砂浜で転げまわるエイにマコト副長も加わり、2発、3発と撃つと、エイはやがて動かなくなった。海際以外は安全だと思っていたルートにとんでも無いエイが居たものだ。
シンが駆け付けた。




