第四章その四 地下通信路
「ははは・・こう見えても事前調査と言うか、きっちり現状把握をしておきたいタイプでね、十分に対馬の通信路に眼を通して来た。シン君のように一瞬で頭には入らないがね」
「なら・・十分気をつけて行って下さい。サイレント連射銃をお持ちですから、二人一緒なら、護衛にもなりますし、でも、シリマツ官吏は重要な幹部なんですから、余り無茶はされないで下さい。現場は俺達がまずやりますんで」
「何か、役に立たせてくれよ、今では私もシン君のファンなんだからね」
「そんな・・」
茶目っ気気味に言うシリマツ官吏も、相当な銃の名手だと思った。それは、やはり実働班メンバーに選ばれただけの者だと言う事だ。知識や、指導・指揮するだけの者では無いと証明したようなものであった。
シンは、砂浜から消えたオオコウモリ群と、山のように散らばったその死体に、銃を構えながら見て歩いた。ビシュッ・・そのシンが砂浜に向けて一発撃った。それは、ギャングエイである。見事に仕留めると、ケンのロープを借りて、引っ張って来る。かなりの大物だ。言われて見れば、オオコウモリとエイとモグラを合わせたような奇妙な姿だが、確かに海洋生物では無く、両生類に近いような生体だと思った。
何事も無く、やっぱり他の個体とは違う一際大きなオオコウモリと白頭が引きずられて来た。そして、シンはギャングエイを・・そして、今度は解体せず。やっと合流したウテン・サテンの台車にて、急いでコウタ・キョウ班長の元のこの個体を届けてくれと指示する所に、シリマツ官吏とダンも戻って来た。白頭の側近であるらしい個体を回収して来たのだ。
「この足で、私は一端ドームにこのサンプルと共に戻ろう。そして、オオコウモリの争いをすぐ報告しよう。それにしても、白頭より、むしろこっちの側近の方が大きいね。驚いた」
「今までずっとこの群れが白頭がトップと思っていましたが、2トップ或いは、こっちがトップだったのかも知れませんね。ここでは解体しても詳細は分からないので、お願いします。俺達は、残存個体をとにかく始末しようと思いますが、どこかへ霧散したようなので、余りもう島には残っていないかも知れませんし、死肉を漁りに来た個体は、とにかく始末します。約半数は撃ったと思いますが、それでも半分ですからね、10時間ぶっ通しで銃を撃ち続け、このミッションに掛かりっきりだったので、もうへとへとっす。腹も減ったし、ちょっと休もうと思います」
「ゆっくり休んでくれたまえ、*台車は達者な掘削班の一名が運転してくれるそうだから、私もその上で休みながら食事でもする事にしよう、はは・・お疲れ様」
*実は、シンがその者を密に指名していたのだ。シリマツ官吏が一旦ドームに戻る際に運転手兼、表向きが護衛と言う事で指名していたと言う事で、ここでもシリマツ官吏は一瞬表情変化があったが、そこまで用意してくれていたのか、有難うとシンに礼を言った。その運転手兼、掘削班の者?シンが言う所の部署の班とはとても思えぬ屈強の男であり、少し複雑な表情を示していた。シンのそれこそ真意など誰にも分からないし、もう内紛をやっているような時は過ぎている




