第四章その四 地下通信路
「ふふ・・良いです、良いです。その内にやって貰う事がありますんで、今日はその左舷の斥候兵に目印をつけて貰いたいっす。それまで動かないつもりです、対馬まではね。それに通信路も健在かどうかも分からないから、ここへはそうすんなり行けないと思うんすよね」
「それはそうだ・・シン・・俺も何か狙って良いか?スコープ付きのライフルを持って来ているのに、手持ち無沙汰だ。勿論オオコウモリを殺るって言う事では無いよ、そこは強く否定しておく」
「か・・まんまじゃねえか、撃ちたくてうずうずしてんじゃねえかよ、ランはよ」
ダンがランの心情を看破し、眉間に皺を寄せた。
「良いよ、撃て・・ただし、俺が指示するまでな」
「おいおい、シン。方針を変えたのか?」
ダンが眼を輝かせたランにそう言うと、
「ああ・・変えた。今日はふと思いついた事を実験して貰いたい。ここまで壱峻島及び周辺を見て来たが、食料源が全く無かったと思ってさ」
「確かに、無かったよな、それは。塩分は海水から採れるだろうがなあ」
シンが何を考えているのかは分からなかった。しかし、ここでのリーダーの言う事には誰も逆らうつもりも無かったし、逆に彼が何を思ったのかの興味の方が大きかった。そして通信路の一番東側にある出口付近から見えるオオコウモリの塒を眺める。
「昨日より・・数が増えていないか?結構空を飛び回っているような気がする」
マコト副長の眼が、やはり良い事を証明したようなものだ。観察眼も優れているのだろう。
「入れ替わり立ち替わり・・例えば、この壱峻島周辺のオオコウモリが行き来しているのかも知れませんしね、でも、昨日は眼が真っ赤になる位マコト兄は見ていた。その感じ・・重要っす。じっとここで待ちましょう。ここは、東西南北に繋がる交差点のような場所だと思ったんで、選んだんですが、ここを殆どの群れの一群は通過し、対馬や、九州内地に行くと思うんすよね」
「成程・・シンらしいとても貴重な分析だ」
マコト副長が納得したように頷いた。




