第四章その四 地下通信路
「うお!お前な、ダン。隠密そのままにほぼ無音で来やがったな」
ランが驚き飛び起きた。シンは気配で知っていたようだ。マコト副長は疲れていたのか、すぐには起きなかった。この点は、肝が太い部分のある人だった。
「はは・・ぐっすり寝ているな・・」
小声でダンが言うと、少し3人は離れて小声で話す。
「今日一日、とにかく眼を皿にして、一生懸命望遠鏡で眺めていたんだ。だが、3本健在なルートでは結局4つの塒しか確認出来なかった。この2日はこんな状況さ、それでも何度も接近して、目印をつけるって言っていたのをなだめるのを往生したぜ」
シンが言うと、ダンは、
「もう・・予定は変更だな・・福江島は今は無理だ。主要道が崩落している」
「ああ・・その可能性はどの通信路にもあった。最初の壱峻島での小島までが本当に順調だったし、道も割と良かったからな」
「ふ・・良かった?通れはしたものの、それが良かったとは言えないだろうが?」
「点検して来てくれたんだな、ここまで」
「ああ・・修復箇所は20~30か所はあった。ここを通信路としてそのまま使用するのは不可だぜ?ショウが、自分の本来の目的を一刻も早く、報告するって思い込んだ事で、シン、本当はショウに褐を入れたかったんだよな?でも、一生懸命に走って来たあいつにきつい事は言えなかった」
そうだったのか・・・マコト副長はシンの本当の気持ちを理解した。しばらく眠ったままで居ようと思った。
「まあ・・少しはそれもあるさ。ダン・・お前のように、この通信路の重要性を一番に理解してくれていたら、勿論ランや俺達もある程度の破損個所を確認はして来たが、更にそれを細分化し見てくれるだろうなとは思っていた。もうデータはショウに送ったのなら、ショウも本当の自分の役割とは何ぞや?と言う事を理解している筈だ。けど、バラリンの発生は確かにこれも大きな前進だ。それも今回の僥倖になれば良いよな」
「ああ・・そうだな。でも性急過ぎるのはご法度だ。だって、生体武器のオオコウモリの本来の調査・把握は棚上げになったままだったもんな」
「その通りだ。1つや2つを知った所で、それは全てを理解した事にはならない。また理解したからと言って、相手は体力・知力・行動力を持ち、奴らは大多数なんだ。簡単に人間になんて服従するもんかよ。白頭の群れだけでも2万頭は確実に居る。全部これを仕留める事も無理だろ?そんな事を考えちゃいけないんだよ」




