困難に迎え
「他にやる事がありますか!」
シンが少し大柄で、今日初面識である、ここの作業班リーダーの*和壁連子に聞いた。
*後に同じ名前の人物が登場してくる。この時のこの男と後に出てくる者は顔も少し名前も変わっていたが・・
「いや、実動班のメンバーが動いてくれるお陰で、十分ですよ。はは」
予想外に修復が進んでいた。細菌に感染しないように、消石灰岩粉微粉末パウダーが塗布されている。消石灰岩パウダーは強アルカリ性を示し、Phが11以上になる。殆どの雑菌が死滅するレベルなのだ。*その為マスクはしているので、顔全体は見えないが、表情は明るい。
「それにしても、凄いすっすね。古い時代の旧型燃料式重機も、まだこんなに稼働出来るんだから」
「はは、あちこちガタだらけですよ。でも、全部ばらして設計図も書き直し、修復出来る部品も全部作り直したそうですから、技術班も優秀です。それに、良くこんな旧時代の機械を保管していたなあと思います」
「確かに。はは・・全て100年前と言えば、人工知能、産業ロボット、AIが全て管理・機能したいた時代だったと言う事ですからね、それは良く分かります」
シンはにこりと返した。
和壁は、
「ちらっと聞いた話に過ぎませんが、我々の住むシェルターには、そう言う旧時代の産業資料が結構保管・管理されていたようです。今我々の生活に欠かせないのが、これも旧時代のPCなんですが、AIのような自動では無く、手動ですけど、かなり大量に在庫があったお陰だったと聞いております」
「そうですか・・我々には、今少し色んな情報が流れ始めて来ていますが、何も知らないでここまで来ましたからね」
シンがそう答えると、和壁も黙って深く頷くのであった。
その場を後にして、シンは歩き回った。周囲が白い壁に変貌していて、これはこれで視覚的に清潔なイメージを与えるし、100年後の世界で人類が初めて野外にて構築物を建造する作業工程は、何か新鮮に思えた。この間に、それこそシンは、修復箇所や、オオコウモリによってあっと言う間にアンモニア・酸に浸食された箇所を、脳内にインプットしていた。それこそが、シンが作った大木の配置図に重ねて、この通路がどこに位置するのか、地図を作製する為だ。恐らく何の指示も貰っては居ないが、実動班それぞれに、作業班と行動する理由がそこに隠されているのだろう。彼らは自分の持ち味を、実はこの時発揮し出していたのだった。会議ではシンを大層褒めたが、いやいや、他11名はそれぞれ選ばれただけの才能の持ち主だったのを、後より知る事になる。日本は、大半の人間も文化もここまでの歴史も失ってしまったが、人としての地球が生み出した才能を、まだ完全に朽ちさせては居なかったのである。何かをせよと言われている気がしていた。全員がそう感じていた事だった。




