第四章その四 地下通信路
ランが苦笑い。子供のように眼をきらきらさせているでは無いか。そして、電動自転車が用意された。既に電動バイク程の機能だった。通路網に初めて立つ3人。シンがスイッチを押すと、ぱああっつと周囲が明るくなった。
「おおっ!凄く明るくなった。ずっと先まで見えるぞ。それに、とても広い道だ」
「結構輸送用の通路のようで、高速ロケット並みの電動車がAIコントロールで走っていたらしいっすからね。尤も、今はそんなものは使えませんし、人が乗り込む用途では無かったようです」
「へえ・・そんなに超高速なら、勿体ないね」
「強烈なGが掛るらしいっす。生身の人間じゃ持たないようです」
「色んな情報を得ているなあ、シン君」
「あ・・いえ、これもレンジ君からの聞きかじりっす」
「ずっと、穴倉と言ったら、怒られるが地下掘削にエキスパートだそうだな」
「ええ・・そう見たいっす。彼らが今ではこうして全面に出て来れるようになるのは、ごく最近ですからね。隔離政策と言うか、やっぱり各国のスパイなども警戒していたのかも知れません。その者になりすます整形手術なんて簡単に出来た時代だったそうですからね」
「何でもありだったんだな・・でも、日本ではそう言う事をしなかった」
「しなかったと言う所に意図があるんでしょう」
そう話をしながら、光の先に進んでいく。すると、幾つもの分岐が見えて来る。シン達は、進みながら、目印をつけて行った。それは10時間後に光を失い真っ暗になると言う想定でだ。しかし、真っ暗になれば再点灯スイッチを押せば済むでは無いか。そうなのだが、そうなると目印が見えなくなる。つまり、真っ暗になってから蛍光する物質のようだ。それがあれば、元の道に戻れると言う計算だそうである。
「成程・・ガンで撃つように壁にこの塗料を施しておけば、ここを真っ暗になった方が都合が良い。確実に戻れるもんなあ」
「レンジの知恵ですよ。それだけ地下通路は迷宮のようです。あ・・そう言う間に前方が真っ暗になったっすね。ここで地図にチェックをつけときますわ、この先で、ここは崩落或いは破損しているようっす」
ランがインプットしたようだ。彼の小型PC内においても正確に距離と位置がデータ化されているようだ。これなら、絶対に迷う事は無いなとマコト副長は思った。
彼らは、その通路を戻り、網の目のようにある明るい通路を進むのだった。それだけでも、この通路網は非常に北九州内に残存し、且つ網羅されている事が分かるのだった。
途中で、昼飯でも食おうと言う事になった。出発して既に4時間が過ぎていた。




