困難に迎え
「ふふ・・その前に、私はオオコウモリの糞の事を話した。確かに寄生虫、細菌などは同時に退治が出来るとの発想だよね、カンジ君」
「そうですが、聞き流して下さい。思いつきの話ですから」
当然そんな事は、考えられたであろう。しかし、出来ない理由があると思う。一気に確かに視界は広がるだろうが、原始社会の中で、人間が栽培と言う手段で移動していた状態から、土地に定着し社会を築いて来た事にも合致する。あながち暴論でも無かった訳だ。
「そうだね、でも採用が出来ない。その理由はもっと話をしていけば納得もして頂けるだろう。他に意見や質問があるかね?」
「何故・・5キロまでの延長なのでしょうか?それに地下坑道にしても、闇雲に掘り進んでいる訳では無いでしょう?貴重な労働力と、限られた資材を使ってまで」
シンが話を戻す為にそう言うと、シリマツも大きく頷き、
「そうだ。ここで、諸君に何故ここに日本の国がシェルターの一つを造ったのかを説明できる資料がある。恐らく何の計画も無く、自分達の最後の手段であるシェルターを造る事は無いだろうから。それは、石灰岩地帯だからこそ、ある地下洞穴が広がる地だと言う事だ。幸いにしてオオコオモリによる糞の殺菌も出来ていて、寄生虫は検出されていない。地下水は安全だと言う点と、核が使われなかったと言う事で、放射能の拡散も無かったと言うのだが、安心してはいけない。実は、確かに100年前には、原子力発電所と言うものは、世界中で全て稼働をしていなかった。放射能の処理にしても深海や、地下深くに埋設された。しかし、核兵器は使用不可になったとは言え、全世界に残っているのだよ。即ち、そこから放射能が微量にしても放出され続けていると言う事になる」
「それは、我々が再び地上で住めない?」
ショウが聞く。
「そこで、放射能除去、除染と言う開発をどこの国よりも進めていたのが我が日本なのだ。日本国内においては過去の原発事故の後、そう言う開発を真っ先に進めて来たんだ。進めざるを得ない状況でもあったのだろうがね」
「そうか・・そうなんだ」
「まずは、この日本で、人類は愚かな兵器の核が使用されなかった。また、放射能の除染、除去が行われた。その事だけは僥倖だと言えるだろう」
「だからこそ、このシェルターから外の世界へ出る意義があると言われるのですね」
「その通りだ。もはや、我々、シェルター内第3世代と言われる者より、生存への歩みを始めると言うのが目標だ。そうならねばならないと思っている。資材・食糧・人口が枯渇・滅亡するまでに」
「はいっ!」




