第四章その三 勢力争い
「それでは、10万頭対100頭。‥圧倒的無勢では無いか・・この戦いは彼我の数で決まるのでは?」
「その数字だけで見れば、そうなるでしょうね。でも、少し不利な状況にも幾つかの優位な点もあるっす」
「聞こうか・・とにかく、良くぞ君達が戻ってくれた。これから会議をしたい」
エライリーダー、シリマツ官吏、マコト副長、キョウ班長、カンジ、ウテン、サテン、そしてケンシン主任が加わった。ここではケン、リン、ショウの第14班がそのまま会議に加わり、11人の幹部会議になった。
「それでは、我々が全ての野外活動を今停止させ、以前のような監視小屋による生活に逆戻りと、少し違うのは地下通路がほぼ貫通している事から、そこである程度の第2ドームや、発電所等の移動も可能だ。狙撃班も組織し、我々に攻撃を加えようとするオオコウモリには狙撃をする命令も下している。だが、圧倒的多数のオオコウモリは、非常に知能も高い。また、我々の火器の射程距離も把握している。そう簡単に狙撃も出来ないだろう」
エライ首班が言う。その通りだ。むやみにオオコウモリを撃った所で、それは有効なものにはならないのだ。それに、馴致オオコウモリや、その馴致オオコウモリが率いる群れを狙撃しては、益々不利な状況を作ってしまうだろう。その点のエライリーダーの判断は誠に常識的で正しい。だが、かと言ってこの状況を手をこまねいて見ているだけでは、馴致オオコウモリは、次第にその彼我の数によって、不利になって行く。もとのもくやみであり、今度は完全に人間を敵とした訳だから、以前より厳しい状況に陥る事は明白。前に戻るが、
シリマツ官吏が空から石爆弾と言ったような事が、彼らなら簡単にやってしまうだろう。また忌避剤としての山切りの木も、圧倒的多数のオオコウモリが自らの体臭でそれを苦にしなくなる事も分かっている。決して現建物は頑丈とは言い切れないと、この監視小屋を作った中心のサテン、ウテンがこの場に居るのも頷ける。彼らは数々の構築物を既に野外に展開しているこの道のエキスパートだからだ。
ケンが言う。ショウも何か言いたそうだが、言葉を飲み込み、自分のデータ等の披露もこの後行うつもりのようだ。
「その事っすけど、馴致オオコウモリは約100頭、今の所野外で死傷した個体は1頭も居ません」
「何故・・言い切れるんだ?今もあちこちでオオコウモリ同士が肉弾戦に近い、空中で衝突を繰り返している」
「はい・・しかし、その戦闘には一切加わっておりません。その肉弾戦は、馴致オオコウモリの支配下にある純粋な野生オオコウモリの一群です。馴致オオコウモリの牙城は、岩山です。誤射されないように待機しております」




