第四章その三 勢力争い
「そうか・・でも、俺達に遺された探索時間は、後1週間ほどだ。どうする?ダン、ここで戻るか?」
「ここまで殆ど四国側と何ら変わらない景色だった。確かに海洋生物も同じく居た。今丁度旧岡山県と兵庫県の境に俺達は居る。このスピードで旧淡路島ルートで走ると、殆ど観察は無視して、距離が推定600キロメートル。1日100キロ進めば、6日でコウタ班長達に合流出来る。進むか・・シン」
「分かった。様子は、今の所大きな予想とのズレは無かった。そうしよう」
こうして、シン達は、調査が目的では無いので、本州ルートそれも南海岸ルートを電動車で、進む事となった。大きな障害は無かった。しかし、リンの報告が気になった。任務を果たす為、馴致オオコウモリが装着してある攻撃用武具を使った事に、少し憂慮をしていた。こうなると、もはや、ボス争い、主導権争いでは終わらない。乾坤一擲の殺し合いが始まるのである。人間達は、馴致オオコウモリの援護射撃をしなければならないのだ。もはや、それを放置する訳にはいかない。この戦闘の如何によって、野生オオコウモリが馴致オオコウモリに対し、完全に敵と見なし、無差別に攻撃を仕掛ける。ここまで殆ど襲われなくなった人間達にも激しい敵意を見せるだろう。
「リン達と一緒に今後の我々のスタンスも相談しなきゃな」
ダンが言うと、シンも頷き、
「伝えるよ、リンも心配している。ひょっとしたら、四国へも飛来するかも知れないと言う事だ、忌避成分があろうとも前にあったように、大編隊で来れば自らの体臭で消える。敢えて四国へ来なかったのも、少ない群れでリスクを負いたくなかったからだろう」
「だ・・な。食料はどうにか確保されていた。まだ彼らには充足出来る位のものはあったからね」
「それが、敵と見なした群れ達が自分達の食料を奪おうとしていると見るから、しょうがない」
「生き残り戦争だもんな、王者も世代交代的戦いに突入するんだからな、知恵がある分、じっとしている事は無いだろう、昼夜を問わずだ、それは既にゴングの鐘が鳴っているからな」
「じゃあ、急ごう、一日でも早くコウタ班長達に合流しなきゃ、一端この調査を中断してでも、不眠不休で走ろうや、交代でやれば、3日もかかるまい」
「そうだな・・少し考えが甘かったのかも知れない。急ごう」
シン達もようやく事の重大さに気づいたのであった。




