困難に迎え
「その大木が、何故あるのかの情報も我々には知らされていなかったから、それは仕方が無い。そんな重要な情報ですら、幹部は秘匿していた訳だ。そして、君達には大変申し訳無い事だが、そんな計画がとん挫すれば良いと思っていたのだろう。だから、実動部隊には死ぬ事を美徳のように教育すらして来た。その流れなんだ」
「何と・・じゃあ、実動部隊の結成に流れが傾いて反対も出来なくなって来たが、失敗を願っていた?」
「言いにくい事だが、半年前までの流れがそうだった。或る意味、その流れをシン君が変えたと言う事になる。シン君の才能を唯一知って居られるのは、大学時代の神野教官だったよね。現我々の事実上のトップになる。でも、姿はここへは見せられない。まだまだ内部には反保守派が居るからね」
「まだまだ組織の中も混乱している訳ですね」
「そうだ。何しろ、100年間余の禁を破ってこう言う組織外へ出ようと言う機運が持ち上がったのは、ここ10年程の事なので・・」
そこは、正直に言ってくれていると思った。隠さず何もかも披露する事で、シン達の結束も強まると見ているのだろう。とにかく行動部隊としてこの12名は特別選抜されたメンバーだと言える。それも実動を経験しているからこそ、余計に彼らの優秀さも際立っているのだし、その実力も認められている訳だ。
「では、具体的にどうするかは、まずは通路の補修と、もう少し距離を稼ぎたいのだ。後2キロは延長したいと考えている」
「通路は一本だけでしょうか?」
「うん、地上の通路は一本だけだ。それ以上は人力的にも無理だろうし、燃料も限られているからね」
「燃料・・つまり、石油などの燃料は100年前には殆ど使う事は無かったのでしょうか」
「殆ど無用だったね。その時代は全てがデジタル制御、つまり電力・電子製制御によって全てが可能する世界だ。地球温暖化等自然環境も重視されていたから尚更だろう」
「環境・・・」
少し噴き出しそうになった。その最たる環境破壊をしたのは先祖じゃないかと思った。シリマツもにやりとする。