第四章その三 勢力争い
「そうか、ケンシンさんはやはりその道のエキスパートだな・・ここ・・見てくれよ、2人とも」
リンが僅かに変化のある海底の様子を、2人に示した。あくまでソナーによる起伏の線状に見えるデータなのだが、リンの眼にはそれが非常に気にかかるようだ。
「これが?」
ケンもショウもそれはすぐには分からなかった。当然、ここまでのデータは記録されているから、リンは、他のデータ記憶チップに切り替え、画面を気になる部分へ戻して2人に見せるのだった。これも、付け加えるように言うが、魚群探知機にしても初めてここで使用する機械なのだ。それを当たり前のように動かせる人間であるリンも、やはり、特殊才能を持つ1人としてショウも感心するのである。
「リン、この魚群探知機は使った事が?」
敢えてショウが聞くが、
「あるかよ、そんなもん。この瀬戸内海探索で3日前に初めて見たんだぜ?」
「その3日で、この機種と言うか操作を熟知したと言うのか、リンはよ」
「ははっ・・そんなもん、ケンだって、誰だって使えるだろう。そう言うショウも、これを連動させるプログラムをたった2時間で作っちまった、お前だってそうだろうが。不要な質問はやめて、だから、これを見ろって」
リンが苦笑い史ながら指さすが、ケンとショウにはその画像の変化はすぐには分らなかった。
「ん・・?これが何か?俺にはさっぱり分からないがなあ・・」
ケンは正直だ。一生懸命画面を眺め、集中するショウよりも早くその言葉を発した。
「分からないか?この線状図形には、3つのこぶ状突起がある。今、この周囲をぐるぐると回り出した時の画像に切り替える。つまり、360度からの違いがはっきりするだろう」
「ああ・・」
線状図形は非常に判別が難しく、それを通り過ぎた一瞬に見分けたリン特異の眼には驚く事ばかりだが、彼らも実は何かを少し感じ始めていた。確かに微妙だが、3つの高低を少し感じる海底丘にも見えるものがあって、船はどんなシステムなのかは詳しくは彼らも分からないが、正確にその地点を中心にくるくると旋回しているようで、優秀な技術系のケンシンの発明機能が働いているようだ。




