困難に迎え
「そして、我々も日本の生体武器が開発されたオオコオモリである事を公開した。もうその時点で、シン君が感づいていたようだから、隠す必要も無かった訳だ。ただし、我々がどこまでシン君に知られているかは分からないし、これまでコミュニケーションも取りあった関係じゃないから、互いに本音を出し合い、ここまで来たのだ。何より、信頼が無くては、この危険な野外実動なんて出来ないからね。脅威に対する何らの手段すら今は打ち出せていないのだから」
「じゃあ、俺の提案したシンツールの活用は?」
「ある程度有効であろう。しかし、ある程度だ。だって、シン君が森を彷徨い、観察した大木の本数や位置は、まだ組織外の5キロ圏内でしかないのだから」
「確かにそうですね。俺達は、行動出来る範囲を片道2時間程度の距離と設定されておりました。コンパスと、時計が生命線でしたから」
シンは頷いた。
「我々も、組織外の観察は必須だった訳だ。しかし、その怖さを知る上部の幹部達は否定的だった。そう、彼らも第一世代と言われる者達に刷り込まれている事もあるだろう。確かに仮にせよ、組織内では学ぶ場所もあるし、職場的なものもある。ただし、選ばれた者しか入れない特定コースのみだから。その条件に満たない者は、当然肉体労働となるのだよ」
「それが、地下坑道掘削ですか?」
「それも必要な事だし、農事もそうだ。生産と言えば、食糧の確保だから、菌類、酵母類は貴重な食料源になる。地下坑道もその意味では、水源確保の上で重要だし、地下坑道で生産されたアルコール類や、飲料類は保管も可能だ。貴重な電力はそこへ使えない事もある。又、ある程度の金属資源も地下で確保出来るし、今主流の石灰岩等は重要な資源だからね」
「はい」
「では、本題に戻るが、確かに大木にはオオコオモリの忌避する物質を発散する。どこの国でもそうだろうが、開発した生体武器が制御出来なくなり、自分達を襲って来たら、それこそ自滅なんだよ」
「でも・・今がその状態では?」
タイミングの良い突っ込みだ。そりゃあ、そうであろう、シン達も思う。




