第四章そのニ 繫がる世界
「一見・・まさしく生体のようだな・・かなりリアルなもののように感じる。ここが淡水だと考えてもこの大きさになると、亀などの爬虫類、鯉他のやや大きな魚類などが考えられる。また両生類のウシガエル、またオオサンショウウオ等かな・・」
ダンが言うと、コウタ班長はうんと頷きながら、
「でも、見る所によるとそう思えなくもないが、仮に両生類だとすれば、一晩、24時間近く1回しか息継ぎで水面に現れないのはおかしいよな、亀もそうだ。なら両生類、爬虫類の見方としては薄くなる」
コウタ班長の見解は恐らく正しいのだろう。
「じゃあ、それならば魚類と言う事になる。もう少しこの池は調べて見る価値が出て来そうだな、ダン、明日からもう少し器具も用意して行こう」
「ああ・・結構しんどい山道だけどさ、案外運動にもなるしな、中岳の探索よりは楽だからさ」
「ははは、お前達にかかったら恐れ入るよ。じゃあ、水中カメラを設置しとけよ。大きな池じゃ無さそうだと言う事だから、水深や何か餌になる生物や藻類なども観察しなきゃならないだろう?試験管など水のサンプルも頼むよ、シン班長、ダン副班長」
「おう、分かった。そっちは、コウタ班長とランで大丈夫だな?応援が要るか?」
「いや、今は良いよ。まだ観察の諸段階だからね。海に出る手段も考えなきゃならなくなる。ボートも必要だ」
「ボート?ははは・・そこまで思い立ったのか。グラスファイバー製なら創れそうだがな」
ランが言うと、すぐコウタ班長は
「おっと・・ラン。君の知識で、もし可能なら、運べる大きさのものを製造班に図面を作成してくれよ、でも今日はそんな話を出さなかったじゃないか、お前も」
「だって・・俺はコウタ班長のあくまで今は助手だ。差し出がましい発言は出来るだけ遠慮しているし、それにこんなに沢山の生体が一度に見られて、興奮していたからさ。そんなボートなんて話が出る前に、玄界灘を越え、本州まで行ける船の事は、とっくに考えていた。スクリューとモーターなんて非常に簡単な原理で出来るしさ。後は船の素材だけだからさ」
「ふふふ・・はっはっは。良いよ、どんどん提案してくれよ、ラン補佐」
「補佐ってよ」
頭を掻くランに、十分その任は可能な男だと見越してコウタ班長も言っている事が分かる。非常にこう言う現場で頼りになる男だからだ。




