第四章そのニ 繫がる世界
「外に出たら、コウタ班長はすごいロマンチストのような夢を語り出したなあ・・でも、少なくても青い海を見ているし、穏やかなもう少し進むと湖のような海が見える。そこから再生をどうするか考えよう。でも、大葉の種は随分撒いて来たよな、俺たちがドームに戻る頃には相当茂っているかも知れないよな、ははは」
「海底トンネルは入り口も出口も広げた。老朽化している箇所も修理した。当分は大きな地震が無けりゃ、持つとは思うが、それはあくまで希望的観測だ」
「ふむ・・地震の規模にもよるわな・・それにまだ俺達は経験も無いし、光ケーブルのコンタクトは?まだ先か?」
「今それが必要ある?シン・・ダンも俺を見つめているが、ランは自分の相棒である『亮』と、かなり離れた所まで周囲に興味があるかのように、きょろきょろとしながら歩いている。山切りの木は、そう簡単には行かないよ」
コウタ班長が言う。少し不思議な顔をするシンだった。
「ん?何でって思っているのか?」
「ああ・・カプセルがあって、それを使う要領も分かっている。また山切りの木を培養し、それを増殖させる事も可能だ。森林を失った地球には酸素も今は満ちてはいるものの、動物たちが増えれば、二酸化炭素が増える。当然だが、二酸化炭素を吸い、酸素を生み出す植物が必要だ。四国は、今北九州しか生態系を広げられない我々にとって、移住できるかも知れない拠点になると思わないか?」
「ふむ・・確かにそう言う事でお前達が動いて来たのは分る。だが、山切りの木を100M感覚で正確に植林した意味もあるだろう?分かっているんだろう?シン」
「光網が使えないと言う事も分かるし、そんなもしかしたら危ない最先端技術を駆使して何世代前に設置したのか分からないが、新通信システム網が既にあると言う事を聞いた。そして恐らく半永久的にそれは消えないんだろう事もな、でもコントロール出来ないものに利用なんて考えもしないよ、コウタ班長」
「じゃあ、どうやって。少々の誤差は当然出る。しかし、山切りの木にとって100M間隔に植林すると言う事は、樹齢2000年、3000年とこの木が生きる為のものだ。土中の鉱物・栄養を全て吸い取る為のな」
「ふふ・・そんな事は承知だし、今更言わなくても良いよ。人が植えるとも言わない。そんな労力を割ける程ドーム内組織のメンバーに余剰は居ないし、新しい生命を誕生させる手段はどうにか先に繋げる目途が立ったが、人員は115年前からかなり減った。また動ける世代は重要な役目を担っているからな、本来であればここは産業ロボットが稼働すべきだ。だが、そんな選択はしないと我々は明言している。なら、もっと簡単な方法がある。もの凄く単純な方法さ。植えて3か月も経てば、山切りの木は約2M程度の高さになる」
「土壌の事は、でも先に調べなくては・・四国の土壌は未知数だろう?」
「いや、四国の西南部は、ほぼ我々の北九州と変わらない。調べた」
「調べた?何時の間に・・」
コウタ班長は、眼をくりっとさせる。ダンが、2人の傍をそっと離れた。もう第14班の中では完結している計画だったからだ。




