困難に迎え
「いや・・だからこそ有効なのだよ。この我々の利用する、数十本にも恐らくなるだろう通路は、地下坑道を確かに掘削して作っていると言う事だ。実際何本あるのかは私も知らないが、その部署も渡した書面で明らかになった。だが、その通路には大きな弱点が見えた・・つまり、オオコウモリの糞、つまりその排泄物が予想外に地下坑道に影響があると言う事だ。オオコオモリの塒近くが、たまたま、この組織外にあった。そして、通路はその塒を通過して創られた。そこがポイントなんだよ」
「え・・?」
分からなかった。分かる筈も無かった。何の資料も情報もまだ無いからだ。
「時間はある。また、諸君にとっては180度違うような情報がどっと入って来て、戸惑う事も多いと思う。その為に、いかにこれまでの情報が秘匿されて来たのか、監視システムの良い点、悪い点等の指摘・分析結果。組織としての編成についての説明も必要だ。なので、1ヶ月は最低実動にて組織外に出る事は控えさせて頂く。基本的には、方法として殆ど昨日行ったものと変わらない。急遽新機能を装備し、開発出来る資材も無いからでもある」
「この3カ月、確かに色々以前とは違うチームとしての編成や、知識を学んで来ました。そして、実動に入った。しかし、たった1日でそれは駄目だと言う事になり、矢継ぎ早で更に組織の大変革、改編があった。オオコウモリの実態について、危険と判断された。しかし、装備は変わらず、同じく実動をする。俺達にとっては、確かに初めて組織の概要をこうしてオープンにされて、戸惑うばかりですが、その組織としての決定は、エライ班長から指示されて行動するのみじゃないですか?そんな今さら組織がどうたらこうたら、ごたごたがあったんだと聞かされて、やる事は決まっているのに、そんな説明が今必要でしょうかね。だから、こんな質問を俺達がする事自体タブーだった。でも、今はそう言う意見も言える環境になったと言う事でしょう?シリマツ官吏」
リンが言った。おおっと心でシンは思った。リンは、どちらかと言えば理論専攻タイプで理路整然としたシリマツのやり方に、少し不満があった。実動すると言うのは、事務系とは違い、それだけの体感訓練をやって来た訳だ。頭で行動するより、昨日行動したように、ポジションを確保し、迅速に行うべき事だ。その前にも誰かが言ったように、自分達に必要な情報だけ今はくれと言うのである。少しシリマツ官吏の顔が硬直した。それは、自分に対する批判とも受け止められるからだが、確かにリンの言う通り、そう言う組織になったのだと今自分が説明したのだ。