困難に迎え
「ああ・・シリマツ君の言う通りだ。過去をまるで拒否するのか、或いは否定するのか、重要な資料が後から後から出て来る。尤も、現状維持をひたすら守ろうとする世代にとっては、不幸な過去であったと記憶に刷り込まれても居るだろうからね。その世代は寿命が尽きればそれで良い。だが、次への未来志向は全く無いんだ。だから、100年前の旧国家体制になる」
エライ班長は、もう流れは変わったのだと言い切った。それが、今の状態となり、一気に情報となってシン達にもたらされたのである。
その時、顔をあげてシリマツ官吏は、
「シン君!君の提出したシンツールなる計画書が、あのまま若山室長にボツにされていたら、この流れは出来ていなかったよ、多分ね・・」
彼は、そうシンに向って言うのだった。一同がシンの顔を見つめる。この男が組織を動かしたと言うのかと言う驚きであった。
「あの・・俺自身が確かに自分のスキルと言うか、これまでの体験と、情報管理室で得たものを企画として提出しました。ですが、その後オオコウモリの生体武器実態が明らかになり、現状でも相当生息数を伸ばしていると言う事です。勿論オオコウモリの情報等全く出ても来なかったんです。ですが・・」
そこでシンは言葉を飲んだ。
「ですが・・の先を言って見たまえ」
エライ班長が言う。
「は・・はい。俺がやはり遭遇したのは、オオコウモリだったのでしょうか?それにしては、もの凄いスピードで一瞬の影しか見えませんでした。ですから、シンツールについては、見えない敵にどう対処し、森林の中を縫うように進む計画でした。しかし、実際は全くの正攻法で通路構築なのです。なら、シンツールの意義などもう消えているのでは?」
確かにそうだな・・ランもショウもそう思った。