第四章その一 矛盾の渦編
こちらの留守組も結構、色んな成果を上げ始めているようだ。彼らは独自で動いているようだが、ケンの言うように、常にブレーンを構築し、情報等の伝達も行っているのだ。
ショウが見切ったようにケンの事を評価したが、やはりシンと双璧の自然の中では頭抜けた判断力と動きを見ても、全く隙が無い。この野犬を相棒にした手腕など十分にリーダーになれるべき資質がある。それを言えば、やはり全員個性があるが、この第14班のメンバー全てがそう言う高い能力を持っている。そのショウも第15班のキョウと共に、副長として才能を発揮して来た人物、兄妹にメイ・リーと言う両博士を持ち、美貌の両性具備の人物だ。その眠っている才能は、シンによって既に見抜かれている。
シン達は、やはり巨大な淡路島が本州と陸続きになっていた事を確認していた。そしてシンの言う通り、大津波が怒涛の土砂を瀬戸内海に運んで来たのであろう。そして隆起・・もともと浅い海の瀬戸内海だ。どちらが先に本州まで繋がったかは分からないが、片側で潮流が堰き止められれば、海水の出口は一か所になる。そして、そこも堰き止められると、やがて大津波の影響によってかき混ぜられた海水は、地震の終息と共に沈静化した。それに隆起は一気に起こった訳では無いだろう、九州南部の火山地帯が今も活発な活動をしている事も併せて、一端海に沈んだ四国西南部が、今度はプレートに反発するように少しずつ隆起を始めた、今度は超巨大海洋プレートの動きであったが為に、短い間に少しずつ動きが始まり、隆起して来たのでは無いだろうか・・そんな分析をダンが冷静にシンに告げるのである。これは、言うなればダン独自の出した見解であり、聞いていれば恐るべき知識である。彼は、単に夢想では無く、画面によってそれを説明しているのである。
「こんなシミュレーションを?一体、ダン・・お前・・」
「あ・・こんな事を想定してここへ来たんじゃないぜ?誰も予想だにしていなかった事だ。だが、俺は、生物班で研究の傍ら密接な繋がりがある地理的環境を学んだ。その中で、日本の地界の事や、海洋プレート等のカリキュラムがあるのは当然だ。そして、エライリーダーもこの程度の事は学んでいるだろうし、知識もある。何もお前が驚く程の話では無い」
平然と言うダンにシンも、
「俺は、確かに大津波の予想はしていた。地殻変動の大異変と電磁パルス爆裂の関連もさ。しかし、実際この状態を見てから、驚く事の連続さ」
「見ただろう?四国西南部は壊滅状態だった。そして確かに海洋生物等も電磁パルス爆裂によってやられちまった。大波が何度も何度も余震も含め、襲って来たんだろうな、それは間違い無くだ。その後、電磁パルス爆裂が起きた・・何故?俺はAIの誤動作だと設定した。意図を持ってやった人間がもし居たのなら、そっちも否定はしない。だから両面で考えた。その中で、シンが淡路島が移動したのでは無いかと言うこれまた驚くような話もし出したし、俺は俺自身の中で組み立てたものだ。時間軸は大地震、大津波・・これが電磁パルス爆裂以前の話になるのか、或いは電磁パルス爆裂後になるのか、いずれにしても大きくその時間差は無いだろうなと思った」




