困難に迎え
シリマツがスライドを見せると、全員の身が凍った。それはそれは醜悪な顔をした、実際オオコオモリの図鑑を見せられては居たが、その姿からは遥かに想像出来ないものであった。どこかそれまでのオオコウモリには、動物本来の人間の眼から見て、愛らしい、自然の中で生きているような・・そんな部分があった。しかし、このオオコウモリは自ら意識を強く持ち、やはり食性のピラミッドの頂点に立っているのだと言うような風貌と、その眼には強い力をはっきり誇示している威圧感が見えたのだ。当然、図鑑等のオオコウモリの顔とは全く違っていた。
「う・・こんな・・姿に?今や・・」
「うん・・捕食動物は、猪や、牛や大型動物にも至るかも知れないだろうね。我々が資料で見たオオコオモリとは、姿が違う。そう言うDNA設計を書き換えるバイオ技術が最も発展していたのが日本だと聞いているし、その技術力の高さは、やはり世界一だとも言われていたようだ。我々が知らぬ先祖の話だから、私がこんな事を言っても白ける話だがね」
自嘲気味にシリマツは言う。
「それで、飛翔スピードはどの位・・?」
ここは、ランが聞いた。確かに彼にとっては、そんな話など、どうでも良かったのだ。
「うん・・今は私もそれは分からない。ただ、ラン君が気になったように飛行速度も生体武器であるからには、相当改良して増しているだろうし、頭部が異常に大きい。即ち知能も相当高いと想像する。何より、集団で行動するから、到底このオオコオモリに遭遇すれば、今の微力な我々では歯が立たないだろう。なので、行動範囲、行動時間などの計測も必要であろうと、カメラを設置して来たのだよ」
「え・・?何時の間に?」
「昨日、任務を終えてから、エライ班長と二人でやった」
「何と・・」
シンは、エライ班長及びシリマツ官吏の大胆さと、二人行動する勇気と判断に驚くのだった。今までの上司とは、全くこの二人は違っていた。部下を危険な眼に遭わせないと言った言葉にも、自分達の行動でそれを証明したのだ。