第四章 探索開始
「ああ・・今の所はそうかもなとは思っているさ。でも和良司令官の話が出た段階から、光ケーブルにしても高分子砲にしても、生体カラスが、オオコウモリにもし飛来して食われちまったにしても、何か辻褄も合わなくてさ。こんな高い技術がある日本ならば、そんな生体武器なんて何種類も可能で生み出せる。つまり、そう飛来したかの如くの演出があり、オオコウモリを放すと言う口実が出来たんじゃないのかな・・それが俺がコウタ班長と話したかった事さ」
「まあ・・今何点も重ねてリンは同時に言ったが・・生体カラスの事に絞って良いんだな?光ケーブルとか高分子砲とか話をし出すと、とんでも無く時間を費やすし、リンと2人だけの会話では終わらないぞ?」
「生体カラスの事だけだ。他は今は良い」
「は・・お前もリン、恐ろしい奴だな・・底を隠してやがる。だが、お前はシンと殆ど方向も考えも一致している・・そこで、お前に質問をしよう。俺も余り時間が無い。少しでも今進めている事が、間違ったり、人為的なミスを誘発すると計画そのものがおじゃんになるからな、初動の時には特に神経も張り巡らせているからさ。人材をとにかく養成すると言う立場ではお前達も一緒だろう?ちょこちょこ人も使っているようだからさ」
「ははは・・ここに居てもお前は全部を見ているよ、じゃあコウタ班長の見解を頼む、手短で良い」
「リン・・お前の視点とほぼ同じだ」
「そうか・・分かった。この話は恐らくメンバーの中では、ケンが一番疑問を持っていると思うが、いずれ出て来る話になるだろうし、コウタ班長も早くその人材を養成し、俺達に合流してくれる事を願う」
「おう・・」
ここでリンはコウタ班長に伝言をした役目を果たし、森の中に戻って行った。リンのオオコウモリ訓練はもう相当の成果を上げ始めていたのである。オオコウモリの大集団も3分の1までに浸透していた。このトップリーダーになるべき個体を生み出しているのが、生物班なのだ。そこにコウタ班長は絶大な影響力を持っている。その部分に今リンは、鋭く切り込んだのだ。恐らくコウタ班長は平然とはしていたが、自分の狙いも全て看破されている思いがしただろう。それだけシンチームのメンバーは能力を開放し続けている。
リンの言う通り、ケンもランに同じような事を語っていたが、彼らは恐らく人間本来持っていただろう動物的感性と言うか、野生動物に備わっている危機回避力であるとか、ソナーが磨かれてきつつあるのでは無いか。中でもシンを別格として、ケンやリンは野外活動を中心に動いて来た事もある。そして彼ら3人の感性はコウタ班長も言うように殆ど共通部分に行き着いている。それは、情報力を主としたり、分析力を主とするランやダンの感性とは少し違っている。だが、彼らもまたシン達と行動したり、彼ら同士で多く会話を交わして行く中で、方向性を見つけようとしていた。どこまでこの彼らのもがきに似た行動が方向性見出すのか、或いはもがきの中で、破滅の道に進むのか・・それは分からない。
そして、それぞれに自然と役割も分担され、彼らは突き進むように動いて行く。




