第四章 探索開始
「その技術は、もう皆も知っての通り、都市、家屋、あらゆるものが電磁パルス爆裂によって破壊され、砂粒のようになってしまった。当時は恐らく砂漠地帯のようになっていただろう。その砂からそう言う有用な資源を取り出す方法を開発していたのが日本なんだよ、だから大国、諸外国のそんな鎖国手段も、もはや通じなかった。資源の少ない国がどうやって世界列強に対抗出来るかと言う事を常に考えて来た国だからね、今その技術は、我々が砂の中から有用な鉱物を抽出し、旧式ではあるがなかなか頑丈だ。仕組みも簡単ではあるが、3Dプリンタと言うもので部品等も製造可能だ。又、3Dプリンタの自作も可能だ。当分我々は、十分この技術で維持が可能と考えている。それ以上をもし望む事もあるだろうが、我々がまずやらなければならない事は、人口の増加は勿論ではあるが、技術と言う日本独自の維持と継承なんだよ、分かるね?」
リンは心の中で唸った。シリマツ官吏の言う通りの行動で今動いていても、単にそんな遺伝子工学だけの事では無い。その為に専門職、エキスパートの養成が必要だと言っているのだ。そして、最新式設備を今は望むまい。望んだとしてAIが動かしていたような事を旧式の設備で出来る筈が無い。だから、現状のものでやって行こう、腕を磨こうと言うのである。実に彼は具体的だった。そしてその為にどうやるべきかを示唆しようとしている。その考えは、シンと全く同じ方向だと思ったからだ。
「はい・・」
優秀なスタッフを集めている。このプロジェクトは是が非でも成功させねばならないものだ。コウタ班長はまずそう言う取り組み部分から具体的な例を上げて説明をして行く。言葉巧みなシリマツ官吏の弁舌には、納得してしまう誘導があるが、コウタ班長の言葉はそれと違う。現実論を述べてどう取り組むべきかの事を進めているのだ。
「では・・我々はとにかくあるものを使用する。そして、例え故障したとしても補修出来たり、少なくても現ある物を採用して行くべきだ。もう当時のAI主導の時代には戻れない。又戻ろうとしても不可能だ。その辺をしっかり弁えて、俺の指示に従ってくれ」
「はい」
リンが見つめる中で、コウタ班長はその電子ルーペを持ち出した。
「良いか・・これは旧式の物と言えども、モニター付きの1000分の1まで映像を転写出来るものだ。君達にやって貰いたいのは、このモニターをしっかり見ながら3つの作業を繰り返し、繰り返しやって貰う。又貴重な卵子だ。それを実験の為に使う事は出来ない。なので、まずは動物の卵子に遺伝子を組み込む作業を2か月間毎日やって貰う。その中から君達の適性を見つけ、専門の作業班を形成する。良いかな?」
はいとしか言える筈も無い。コウタ班長は最初から無理な作業を押し付けたりはしなかった。命じた作業にとりつき始めたスタッフだった。彼は、リンに、にこりと微笑み、テーブルに座るように促した。リンは感心してそれら一連の事を眺めていたのであった。




