第四章 探索開始
「ああ・・今の所T国で人らしき生存は確認されていない。かなり高感度のカメラもあちこちに設置し、回収もして来ているが。この作業にはかなり馴致したオオコウモリが相当数出て来たからな、やらせている。それにオオコウモリは、相当知能も高いから馴致も早かった」
「それは、今は、そっちの話は良いよ。現にここの上空に居る。いつもそうなるが、広げ過ぎる話は結局うやむやに終わって、また後から後から新情報になって出て来るからさ」
「ううむ・・そうかあ・・なら、俺は思うが、和良司令官が再生手術を行なった可能性は高いと言う話だ」
「それは、聞いた。だが誰もそんな方法も分からないし、その場で見た訳でも無いんだろうしな、黒服連中も恐らく知らないんだろう」
「知らないけど、それを行なったと言う事になる」
「何が言いたい?」
「そんな超天才が、こう言う方法もあるよと誰かに言わなきゃ、こんな情報なんて洩れないだろう?」
ダンが言うと、シンは頷き、
「存在が確かだったのなら、どこかに痕跡がある筈だ。それを実は探している」
「そうだよな・・シンの目的の一番大きなものは、四国遠征・・しかし、少し喧噪を避けて、じっくり勿論この探索の重要性もあるが、調べようと言う事だもんな」
「地下坑道の掘削方法はあると思う。恐らく、意図を持って封鎖されたんじゃないのかな、じゃなきゃ、何でここに住みたいと言う無気力な者達を、強引に第1ドームに移動させる必要があるんだよ」
ダンも大きく頷いた。話の本筋が見えて来たからだ。
「そこ・・俺も何か話の筋としては分かるが、不自然な気がするし、第2ドームをしきりに喫急に探そうとした意図が隠されているように思う」
「でも、正直に神野黒服も、知っている情報の全ては伝達してくれたようにも思えるが」
「あれじゃないか・・閉鎖的環境を作り、それぞれが情報を分け合えないようにセパレートした部分にも、何か意図があるのでは」
「ふむ・・疑心暗鬼に陥りそうだ。だが、和良司令官が居た、存在したと言うのはかなり信憑性が出て来たな。その者が動かさなきゃ、誰もやれないと思って来た」
「謎が実に多い。それに情報が行ったり来たり、錯綜しているし、同じものが微妙に変わって来たり、又変化したりもしている」
「それだけ、人間と言う本質が、疑り深いし思考する生き物だからだよ、ダン。でも、思考もしない、そのままで良い、目標も夢も無い、与えられた事をそのまま実行する・・こんなの生きていると言う意義があるのかな・・殆ど大半がこう言う人間なんだよ、ドームの現状はさ。やっきになって教育やカリキュラムをこなしても、やはり機械上の方程式でしかない」
「もう人類は滅亡へ詰みの状態って事か、そんな話をしていたら、俺達の生きている意義すら希薄になっちまう、シン、それは言っては駄目だ」
「あ・・ああ‥済まん。ダン。見えないものばっかり追いかけていたら、つい自己嫌悪になっちまう」
「それも人間なんだろう。第1世代が命を絶ったのは、間違い無いだろう。殺されたんじゃないよ。ただ、*意図的に実験台にされて、死を選ばざるを得なかった。そう思えば、益々人類なんて否定されちまう。一人の者によってな」
*このダンの言葉がかなりの謎の部分に迫って来るのだが、今の彼らに分かる筈も無かった。




