第四章 探索開始
激しく吠える2匹の犬。シン達は、犬の傍までゆっくり歩いた。方向的に犬達が何かを警戒しているのは明らかだ。ダンは左右にも注意をするが、2匹の犬は、真っ直ぐ前方を向いている。
「うう・・ぐううう・・」
シン達が、横に来ると犬達は吠えなくなったが、低い唸り声をあげている。
この子犬達は、確かにまだ成犬の大きさには達していないものの、立ち上がればシン達位の背があり、シェパード系と言っても大型犬種になるだろう。力も強く、猪程度であれば、真っ向からでも対峙し、戦った事が何度もあるのだ。
どうやら、複数の対象ではなく、一つの標的に対して吠えているようだった。
「う・・くせえ・・」
その時、風向きが少し変化し、ダンが異臭に鼻を摘まんだ。続いてシンも
「うお・・これは・・」
同じく鼻を摘まんだ。
「よし・・よしよし・・『伴、銀』・・お前達には耐えられない匂いだったろうな、何かの死骸があるようだ」
シン達は、もやの中からそれが生きているものでは無く、既に死した対象で有る事を悟り、鼻をタオルで抑えながら、その対象に近寄った。
「う・・これは、何だ?」
海藻のような、或いはクラゲのような、佐賀県の海で見たような半透明のどろどろのものだった。
「佐賀の不明生物がこっちに?」
「いや・・どうも違うようだ。海洋生物だろうな、波際に打ち寄せられている。佐賀の海の生体と比較すると、それほど大きくは無い」
「ふうむ・・生体学の俺でも余り見たことは無さそうだが、小型のタブレットを持って来ている。検索をして見よう。それより、『銀、伴』、この腐った生体より風上に行け!お前達には相当苦痛だろう。幸い南が風上だ」
ダンが指示すると、犬達はぱっと離れた。視界が効かなくても、犬達にはそう不便では無い。鼻と耳が発達しているからだ。




