第三章その三 海を渡る
「ラン、何かお前は今思ったな・・それを言え。お前は俺の予測しないような事を突如言う。お前の中に眠る能力が半端ない事も分かっている。それを開放しろ」
「無茶振りをしやがる。でも、俺が今思ったのはな、あのカードだ。あのカードは和良司令官が作ったものだと思った。断言出来る」
「そうだな・・確かにそうだった。あんな技術は誰にも真似が出来ないだろう。塔の秘密の一端もそこに込められていた。しかし、あのカードを開示出来たのは、何故だ?お前達、コウタ班長、ダン、メイ、リー博士の秘密だったのか?」
「今だから言う。固く口止めされていた」
「すげえ極秘事項が込められていたと言う事だな?そこに」
「ああ・・そうだ。しかし、その時に和良司令官のわの字も無かった」
「それも、神野黒服のメッセージによってだ」
「これも今だから言うがな、シンは皆の前で開示しちゃいけなかったんだよ。自分一人で見るべきだった。だから、こんな混乱や疑念も生じたのさ」
「そこは・・確かに俺も反省すべきだ。しかし、この事で情報がどこかに残っていないか、調べる者も居るかと思ってな・・」
「そこが間違い。船頭多くして船陸に上がるってもんだ。指導的立場になっている事をシンは自覚しなきゃならん。そして、何もかもオープンでは駄目なんだよ。だって、そうだろ?それぞれに自分の処理能力は違う。理解力も違う。そんな者が居るからこそ、今回、尤もらしいそんなちくりが走り出したんだろうが?幸いな事に、俺達にもシンとは違うネットワークがある。リンもそうだ、ダンだってもっと多くの人間関係を築いている。それはエライリーダー、シリマツ官吏にしてもだ。確かにこれは邪推では無かっただろうし、本音の部分でシリマツ官吏が、自分の立場を強く認識したんだと思う。トップは2極化したら駄目なんだ。シンは出来るだけそれをやりたく無い男だからこそ、波風を立てないで今まで黙って来た。ここで強く言う、お前を崩すんじゃない、俺の忠言だ」
ランがそう言うと、シンは深く頭を下げるのだった。間違いは誰にでもある。しかし、その前に相談出来るせめて第14班には話をしてくれよとランは友情の言葉を投げかけたのだった。
「じゃあ、言う。カードの存在は確かに俺が数種あると突き止めた。それは、廃棄されたメモリーカードを俺は集めていてな、そこから趣味の一環としてあらゆる情報を集めていた。俺なりにゴミ同然のPCを集めては、連結し、限られた電力内で分割して保存して来たんだ」
「ふ・・そうだったな、お前はそっち系の者だった」
シンは苦笑い。




