第一章 進の日常
「とにかく、そのシンツールを良くご検収下さい。その上で、私も確かにポカもあった事には反省もしております。それは、言い訳になるでしょうが、日々更新されるシステムと、現場での乖離が余りにあって、戸惑った事もあります。そこで、その説明をいちいち求められる環境下には無く、自己分析と納得において、独自の判断を致しました。それがこれまでの経緯と結果で御座います。今回のシンツールとは、私の経験と、現状における情報・解析を基に、今後どのようなツールを持って、対象にぶつけるかと言うシミュレーションで御座います。それまでさえも門前で否定されますならば、もはや私もここに居る価値はありません」
そこまで強く言うシンに誰もが驚いた。寡黙で、今まで現場でも出来ない奴だ。×点を食らって、事務系統に配属されたと思っているし、確かに、周囲はいじわるをした。それは、どこでもあるようなシンを無視したスル―や、教えねばならない事を、自分で調べよと冷たくあしらっても来た。しかし、この言動を見る限り、決して暗愚で出来ない奴では無く、若山の言葉を聞いても、現場で結果を出して来た者だと言う事だ。驚くのは当然の事だった。