第三章その三 海を渡る
「第4世代が誕生しても、出生の事は言わないでおこうな」
「は・・くくく」
リンがランに言った言葉だ。ランは苦笑いした。しかし、試験管ベビーも豚から生まれる人類も同じ事だ。保育器によって育てられるからである。彼らに出生の秘密を知らせる事は無い。こうして、今まで未着手だった人の生産と言う言葉には多いの語弊があるものの、そこにこの状況下だからこそ着手したのである。もし、今の危機的状況が更に悪化してはと言うエライ首班とシリマツ官吏の桜島等の状況を見て話し合われた真っ先の事案であった。これには、シン達も多いに同調したし、優秀なコウタ班長をこれ以上第2ドームの管理に張り付けておく訳にはいかないのだ。メイ・リー博士も卵子を提供できる立場だ。積極的に協力をする事にもなったし、同じくその遺伝子工学、生体学へも傾注していく。この分野のエキスパートは、キョウ班長もそうだ。彼もそちらの部門に移って行く。そしてショウが第14班に加わる事になった。頼もしい仲間が1人増えた。こうして、観察・分析は日々寸刻の間にもされて行くが、大きくその数値が変動する事も無く、不気味な生体に到っても殆ど現状から大きく変化する事は無かったのであった。
「変化が無いね・・」
シンは一緒に見ていた一緒に加わったショウにそう言うと、
「実際不気味ではあるけど、動きも少ない。体が巨大だって事はあるけど、他に襲って来る生体も居ないしね・・それに海には極端に生息生物って少ないんだろう?」
「それが、深海については殆ど電磁パルス爆裂の影響は無かっただろうとコウタ班長が言っていたんだけどね」
「でも、深海生物が浅海にはなかなかやって来ないだろう?」
「まあね、理屈的にはそうなんだが、この生体が深海生物で無いとは言い切れない部分もあってね」
「組成の事?」
「ああ・・あれから何度か挑戦したんだとキョウ班長も言っていたが、成果は無かったようだ。例えば、小型のこれもラジコンで言うおもちゃだけど、海に潜らせてこの生体の組織を切ろうとしたが、出来なかったようだし、空中からドローンで釣り針風のものを垂らして、組織をこれも採取しようとしたが失敗したようだ」
「ふうん・・何等かの防御反応を示しているって事かな」
「確かにそう言う反応を示しているんだろうね、でも触覚と言うか、殆ど眼なんかも確認されていない。どんなセンサーなのかも分からないんだ。それにこれもコウタ班長の光ケーブルのセンサーと言うのがあるらしい。この生体の大きさを測ろうとしたものの、とてつも無く大きい以外は、見た目と同じだ。それ以上の結果は今の所出ていない。やり方は色々あるんだろうけど、コウタ班長も、遺伝子生体班の方に戻っちゃったからね、そうそう遭って、聞く訳にはいかないしね」
「その事だけど・・」
「ん?何」
ショウが少し言いにくそうに、シンに言った。




