困難に迎え
一つ目の音波装置の設置が終わった。途端、何か周囲が変化する。ぴたっと生物の動きが止まったのである。超音波を認識出来るのか、或いはそのパルスが逆に動物達に危険信号を発しているのかは分からない。又合図だ。このまま進めと言う事である。彼らは更に奥地へと進んで行く。この時代のこの音波発信機は、むしろ発明に近かった。それによって、組織外の風景がある程度把握出来るようになるかも知れないからだ。100年の歳月は、決して甘くは無い。そして、組織外では台風や地震によって、大きく変化もしている。川の流れも変わっただろう。住居を放棄した段階で、恐らくそれまでの町や、道路、人工物はどうなっているのかは分からない。分かった所で、そこはゴーストタウンと化しているだろうし、あらかじめ、時の政府が街そのものを破壊してしまったと言う事も記されている。そこまでやはり愚かな事を人間は・・先祖は、やってしまったのだ。そして電磁パルス発生後、シェルターに逃げ込んだ。
2か所目、3か所目と順調に装置は設置されていく。シン達が歩いた後には僅かな通路が出来ている。
そして、この日は10か所の装置を設置すると、組織内に何事も無く戻ったのだった。
「お疲れ様だった!それでは今日の音波装置の設置は完了した。ゆっくり休んでくれ。シリマツ官吏と私は、採取して来た茸や撮影した写真を報告に行く」
「はい!」
ふう・・シンは合図や、信号によってコミュニケーションも上手くいった事と、今回の設置ミッションが何事も無く終了した事に溜息をついた。
「どうした?」
ショウが声をかけて来た。
「いや、何事も起こらず少し拍子抜けしたと言うか」
「嘘を言え」
その後から、ケンがシンの言葉を否定する。ケンと言う男は短期間だが、冷静である。そして、少し短気な部分も持っている。
「嘘じゃないよ、ケン。何を持って嘘だと言うんだよ」
「シンからは、ぴりぴり感が誰よりも発せられていた。お前達は、マコトの両脇を固める第二隊だ。後方の俺達には分かっていたんだよ」
「ふ・・じゃあ、ケン、お前に聞くが緊張をしなかったと言うのか?」
「ケンだって、相当緊張していたぜ」
また声が聞こえた。その後ろに居た、サテン、ウテンであった。ケンはカイと一緒で前の組に居た。