第三章その三 海を渡る
*ここは幹部会議の再び席上だ。話の流れから個室からシーンが移っている。
「以上開示しました。これ以上の報告はありません。又現組織のトップリーダーがエライリーダーで有る事に対して、自分は何ら異論も御座いません。出来得れば、各自セクトでもう少し話をさせて下さい。我々は直面する現状にとにかく対処せねばなりません。その為に又有意義なご提案があれば、会議の開催を願います」
「分かった・・そうしよう。私も頭が混乱しているが、我々は一枚岩になってこの現状を打開して行かねばならないのだ。その思いは一つだ」
「自分も同じです。シン班長もそうだと思います」
コウタ班長が付け足すと、シン達は再び個室に戻った。
そこで、ダンが静かな口調で言い出した。
「ずっと謎に包まれていた第2世代の動向だが・・やっと今の事で理解した。つまり、和良司令官はドームから飛び出したか、抹殺されたかのいずれかだろうな。しかし、今の話を聞いていて、神野黒服達が和良司令官を簡単に排除出来るとは思わない。それに第2.5世代を3000人しか居なかった人口を5万人まで回復させた手腕にも功績があると思う」
「ダン・・しかし、AIが第3世代を生み出したと言う事は聞いた。そこまでは稼働していたと言う事だ。和良司令官だけが、そこに貢献したと言う事実では無いだろう?」
ランが冷静な口調で言うと、
「少なくても、AIの主導権を誰が持っていたかに尽きる。和良司令官にそのボタンを与えられる事が無かったからこそ、自分で開発したのでは無いのか」
「俺もランの考えに同感だ。何か、両極端が見えるような気がするんだ。そこまで出来る超天才が生まれたのならば、神野黒服達を嵌めて排除しようとするどす黒い意図が見える気がするぜ?俺は」
リンが言う。
「それならば、神野黒服が最後まで戦った内紛と言うのは?かなりの年代の開きがあるぜ。既に95年前に外に出たんだろう?第2世代が」
「待て待て・・それなら年齢が全く合わなくなる。少なくても今から30年前でなきゃおかしい」
「それなら、そこで内紛があったと言う事か?第2.5世代の年齢は実にばらばら・・50歳代も居るし、30歳代も居るんだぜ?和良方式が生きているじゃないか」
「それは、定かでは無い。実際にAIが30年前まで稼働していたと言うんだから、彼らが第2.5世代であるかどうかの立証は不可能だ」
「だな・・調べる手立ても皆無だ。まして人為的であれ、AI手動であれ、同じ事なんだ」
「ふうむ、同じ事・・なのかなあ」
「生産された人類と言う事さ。違いなど無いだろう?」
「無いな・・そこは、そうだよな」
こっちはケンだ。冷静に言った。




