困難に迎え
いよいよ9か月ぶりの組織外活動であった。鬱蒼と茂る森林に変わりは無かった。背の高かさに大葉が生い茂る。山切りの下はかなりの部分で大葉に覆われた自然林であった。それは、そうなるだろう。その昔植えられた檜、杉などの針葉樹は、自然の猛威の前で悉く倒され、それまでの数百年前の時代に生えてきた筈の広葉樹も消えてしまった。鳥は多くは居ないが確かに鳴き声が聞こえる、虫は何故か殆ど見かけなかった。つまり食性のピラミッドがどのように機能しているかと言う疑問が沸いて来る。この100年間で増えた動物とは・・それは猪や鹿では無いかと言われている。ならば、ウサギやその他の小動物も、きっと繁殖しているに違い無い、それは組織から放したと言う情報も出て来ていた。やっとこの実働に対して出て来た新情報なのだから、驚くしかない。シン達、このメンバー達はいかに無謀な実働を義務付けられたかも分かるだろう。
シンは、ここで本当に人間が絶滅したのか?と言う疑問を持った。それは小動物や小鳥などの数が非常に多いかは少ないかは別にして、耳栓をしているものの、今までの経験の中で、確かに鳴き声がするからだった。
ランから合図が来た。何をきょろきょろしているんだと言うものだった。慌ててシンは何でも無いと否定しながら、自分のポジションを確保しながら進んで行く。森林を歩きながらも注意深く周囲の状況や生物の変化も観察している。異変は人間だけでは無い。何かの動物の動きにも現れるからだ。
今の所変化は無かった。以前と殆ど変わらない風景が広がるのみだった。エライ班長が合図をする。一か所目に、超音波相殺信号機を設置するのだ。大きな木があった。その幹に機械を打ち込もうと言うのである。信号機は約1年間音を発信し続ける。もし、これが効力を発揮するのならば、組織外地図は少し変化するだろう。開拓出来ると言う事だ。その組織外にて食糧事情を少し改善出来るものがあるのかも知れないし、茸などは重要な食料となる。それは、ここの気候が温暖で、湿度もほどほどにあって、勿論オオコウモリにとっても生育に適している環境だと言う事だ。その当時の日本は温暖化が進み亜熱帯気候に近い状態になっていた。
当時予想されていた海岸線はせり上がり、陸地面積が減った。南極の氷が相当溶けたからである。その分かなり海洋生物にも変化があったと言う話だ。生体武器の中には海洋生物も居るだろうとの事。そうなると、海洋を行き来できる事も難しくなる。帆船や木造船の時代に戻れと言うのか・・そんな職人などとっくに居なくなっているし、100年前には皆無であった。模型ならあるかも知れないが、とっくに朽ちているだろう。そして、その大型海洋生体武器が出現したとして、イルカ類や、シャチだったとしたら、知能がもともと高い動物だ。人が海洋で生き延びられるとは思わない。




