第三章その三 海を渡る
「それを95年前に考えた者が居るのさ。まさしく電磁パルス爆裂後、冬眠しなかった黒服の第2世代の者がね。彼は拒否したんだ、勿体無いと。その時間に研究が出来るとね」
「ああ・それが天才科学者なんだ・・」
「そうだ、その間に光ケーブルの開発を更に進めた。だが、その研究資料は全く残っていない。かろうじて俺がかき集めた資料は、先ほど披露した全てだが、そこを俺は、ずっと調べていたんだ。旧組織だったら、俺は投獄されていただろう、規律違反だった。だから今まで言えなかった。それに、今シン班長が言ったように人類復活の道筋は、やはり優性遺伝子の研究しか無かった。むしろ、それは事細かく今では資料も分散され残っているから、後は機械がやっていた細かい作業だけだ。方法は分かるんだ。これを解決すれば良い。しかし、今時点では無理だと思うし、その為に従事できる人も居ない」
「そうか、良く言ってくれたな。今ではコウタ班長、お前を咎める者は誰一人居ないさ。つまり産業資料館を部分的にではあれ、一部のこれも端末を動かせたのは、その光ケーブルの存在と言う事になる。勿論プログラミングもそうだけどさ」
「分かってくれたか・・そう全部繋がって来るだろう?俺達は難解であろうとも固く閉ざされた扉であろうとも、第2ドームの扉を開けたように一つ一つ解き明かさねばならないんだ。そして、日本のシステムこそ、光ケーブルで置き換えられる寸前だったんだよ。それが完成しておれば、日本は電磁パルス爆裂の影響は受けなかった」
「何だと・・そこまでその天才博士は進めていたのか・・」
「存在を確かめた・・しかし、一切黒服連中からは聞かれなかったし、その者は寿命を削られていないとしたら、生きている可能性が高いんだ。しかし、ドームからは脱出した可能性が高い。一つだけ・・聞こえて来たのは、自分が世界に君臨する新しいリーダー、司令官になるんだと言う言葉だけだ。そのメッセージが残っていたんだ」
「何だ・・と?司令官?」
「ああ・・もし、その者が発見されたら、俺達には希望が見える」
「だけど・・それは、反目分子の親玉じゃんかよ、或る意味、狂っているとしか」
「天才と狂人は紙一重だと言うしな。じゃあ、光ケーブルの話を最後までしておく。その司令官の話は又次にする。シンなら何か聞いていると思ったんだがな、神野黒服から何か伝言は無かったのか?」
「いや・・無い」
「そうか・・」
実はシンはこの場で嘘をついた。神野黒服からある伝言メッセージを受け取っていたが、そのままで開示していなかった。そんな時間も無かったからだが、もしもの時が来たら開示しようと思っていた所だった。




