第三章その三 海を渡る
「ああ・・その大きさにこだわったのかと思ってね、つまりそれなら、堂々と光通信の工事を行なえる。誰も、どの国も不思議とは思わないさ、だろう?」
「ふ・・俺が、この半年間ずっと調べて来た方向性を、たった数日でシン班長は出したと言うのか、全く驚かされる事ばかりだ。今日はまだ重要な話もあったんだが、良いよ、この光ケーブルの事に集中しよう。その為に神野黒服の話まで出したんだが・・無線LAN・・宇宙空間までも含めてそれが主流の時代に有線LANなんて、何と旧式の事を一生懸命やっていると思うだろうね、事実調べた所で何の変哲も無い光ケーブルなんだから。そうだ、シン班長の言う通り、ここにトリックがあった。何重ものそれはトリックであり、急激に日本はその開発を進めていたんだ。こっちはエライリーダーの専門分野になるだろうが、あらゆる金属のマッチング、つまり合金と言うのがどの国でも開発されていた。旧時代にはその資源を持った国が、裕福になり、持たない国はそれを輸入し加工した。しかし、火山を見たように、日本には非常に多くの火山帯が走り、色んなプレートが衝突する地震国でもある。そこに着目したこれも黒服メンバーの中に居たと思うんだが、残念ながら情報は全く出て来ない、天才博士と呼ばれる科学者がこれを開発したんだ。超高温、超高圧で鉱物組成の結晶密度をそれこそ、分子レベルまでぎゅうぎゅうに押し込み誕生させた金属MIXがね、それがニッポニウムと言う金属なんだよ」
「へえっ・・それはその天才博士しかもしかして作れない?この技術は日本でしか製造出来なかった?」
「その通りだ、日本独自の技術は様々あるが、ドームの素材一つにしてもその科学者が提案したそうだ。あれだけの火山の一斉大噴火があったと言うのに、全くこの北九州が影響を受けていない筈がない、また地震も多発した筈だ。なのに、そんな記録など皆無だった。俺達が生まれてからもそんな地震なんて感じた事も無かっただろう?」
「ああ・・無かったな。それに確かに・・そんな大噴火が起きたと言うのに微動だにしていない。一体、今もだけど、地震を観測する装置が破壊された事もあるだろうが、体感的にも・・」
「だよね、その原理は置いとこう、俺も今の所不思議だが、そこの部分は分からない。だけど、一つ紐解いて行けば、案外次々と繋がっている事も多くある。つまり、このニッポニウムこそ、世界には一切発表されていない元素が含まれている。そして、日本でしか存在しないんだよ。鉱物組成については、もはや技術も分からず、再現も出来ないだろう。まして今の保持機械や、システムではね」
「だろうなあ・・で?」
「その波長をコントロールする事によって、例えばダイヤモンド級の硬度を持つ岩盤であろうとも簡単に貫通する。それが世界的に網目状に光ケーブル回路が出来上がった理由さ」
「成程・・そう言う事か。じゃあ、あのケーブルがダミーであった」
「形状、その他は殆ど変わらない。しかし、実際光が走る被膜はこれも特殊素材さ。後から被膜出来る仕組みのようだ」
「後から?」
「そうだ。光は貫通すれば良い。そしてどこへでも開けられる。しかし、その光が発見されては、頭隠して尻隠さずだろう?」
「ふふ・・ははは、まさしくな」
ダンが笑った。シンもにやりとする。




