困難に迎え
徒歩は、軽微な装備なので比較的楽ではあるが、約40分程歩くと結構これでも足に来る。所詮生身の人間なのである。こんなものだ。彼らが超能力を有している訳では無いし、そんな類の者が存在する事は無かった。ただし、生体武器となったカラスやコウモリには、そう言う突発的変異が起こり得る。DNA操作と言うこれも人類が行った愚かな行為なのだ。進化の過程の中で、突然変異は起こり得る。しかし、人為的にそれをやり続ければ、どこかで暴走が始まる。まして、生体武器として開発したからには、どこかに電極が埋め込まれ、人間の指示に従うようにプログラムが組まれていたのだろう。だが・・それも不可能になった。人類の大発明である電気を使用すると言う、全ての基を遮断したからだ。核を使えなくすると同時に、自己を守る為に放棄せざるを得なかった。愚かな行為・・過ちなのだった。それは・・そしてこの蠢きだした残り少ない人類が、何をこれからしようと言うのか。再び食の頂点に人類が立った時、転覆を狙っての事か、そしてまた愚を繰り返すと言うのか。しかし、シリマツは言った。思考するのが人類ならば、思考する事を放棄した瞬間に、完全に種は消滅する。原始社会では、純粋なる力関係が支配するのだから、人類など非力な種は、こそこそと強い者から隠れて生きて行くしか無い。その時、食の受給が滞れば死滅してしまう。それだけ脆弱だと言う事だ。そして、人類などむしろ居ない方が、地球環境的に良いのだからと。自然は、あるがままに猛威を振い、簡単に地形を変え、暴風雨によって生活圏も洗い流すだろう。飛来する隕石によって、100年前の超科学でさえも防ぐ事が出来なかったものを、現状態ではその試練を甘んじるしか無いわけだ。
そんな中での実動部隊の出発・・或る意味、自然に単身・素っ裸で向っているのと等しい。だが・・やる意義がそこにあるのだと言う。
合図が入った。いよいよこの半年で、ここまで確保した組織外通路から出る。更に最終出口の門の前に到着したのだ。半年程の通路工事では、また人海戦術による壁工事では脆弱だった。だから、慎重に組織外に出るのと同じく警戒しながらここまで行進して来たのだ。幸い何事も起こらなかった。一応、組織外と言う場所にあり、簡易ながら隔絶出来ている事を意味するし、ガソリン駆動による重機は、殆ど人力制御だがこれが使えたのだ。これもガソリン等の燃料もいずれ枯渇もするだろうが、バイオ燃料がそれに変われば、まだ数百年は機械が壊れなければ大丈夫だと言う。しかし、機械は当然持って後数十年であろう。とにかく、そう言う工事を行って来た結果、生体武器達に進出される事も無かったと言うのだ。
ひとまずは、組織としてのある一歩が、始まったと思う。そして、当然、地下通路においても構築されていると言う事だから、日本に限っては、地下を動くもぐら系統の生体武器は居ないと言う事も分かっている。国内以外で同じくこう言う機械を駆動し、地下通路を構築している所はあるかも知れない。ただし、それは生体武器や、内部に侵入しているスパイ等が必ず居るものだ。既にもうそう言う他国が内部崩壊している可能性もある。そう言った事も含めて、同じ国同士だからと、もしそこで合流出来たとしても、100年以上全く接触も無かったのだ。相手が居たとしても、敵だと認識もするかも知れない。また言語なども通用しなくなっているかも知れないのだから、油断は出来ない訳だ。更に言えば、情報の遮断された世界では、既に組織単体は一国を形成していると言う事だ。迂闊に同じ国、同じ民族であっても、思想がシン達の過ごしたこの10年の中でも支配されるから、手を握り合うには、相当の警戒もせねばならないと言う事になる。正に前門の虎、後門の狼だ。シン達の組織では、その事も徹底に調べたと言う事だ。事務系より実動部隊で生死を分ける程の経験をした者程信用を受けると言う事が頷けよう。
そう言う事を、エライ班長は隠さず正直に打ち明けたのだ。だから、シン達の信頼を勝ち取っているのであった。




