第三章その三 海を渡る
「なら、この佐賀県と昔言われていなんだよな?115年前には何区画とかエリアと言う呼び名だったそうだが」
「確かに、位置的に見ても合致する。佐賀県と言うエリアに間違い無いだろうが、正確にはGPSも機能しないから、絶対間違い無いとは言い切れない」
「良いじゃないか、そんな正確性を求めている訳じゃない。この不気味な生物は何だと言う話だ」
「ダン、デジタル保存はしているか?重点的にこれを撮れ。予備は使い切っても構わない」
「了解だ。中岳でかなり使ったが、これはとんでも無いような気がするぜ」
「ああ・・俺達が井の中の蛙だとしても、こんな生物は、今までの習得した記憶の中に居なかった。また、どんな分類なのかも全く分からない未知の生物と言う事になる。
2人は肝を潰していた。海からはかなり離れた場所で、その動きをデジタル保管し、彼らも帰途に着くのである。奇しくも殆どドームへの帰還は変わらず、シン達が僅かに半日早かっただけだった。すぐ報告は全体幹部会議と言う形で、4Gと言う立体画像を丸いテーブルの中央空間に表現出来る形で、360度見える状態で報告が行われて行く。大きな衝撃を受けていたのはエライ班長だった。
「こんな・・南九州は壊滅的な火山の噴火で状況が変化していたのか・・」
「我々には、阿蘇山及び、桜島噴火と言う情報は全くありませんでした。よって、これが見た現実そのものです」
「我々のドームを取り巻く環境がこれ程切迫したものであったとは・・」
コウタ班長ですら、この報告に絶句していた。それは無理も無い。第1ドーム、第2ドームとようやく発電設備も稼働し、それらを動かすシステムを構築して来た彼らに、シン達のように、動ける余裕は無かった。人間が出来る事などたかが知れているのである。その昔なら自動運転の無人飛機が飛び回り、寸一刻も見逃さない監視カメラがあちこちに設置され、24時間フル稼働でAIが管理していただろう。情報もあっと言う間に分析され、且つ議題に上るレジメまでをも準備もしていただろう。そんなものは2度と使わないとコウタ班長もシンも意思統一が出来ている。ここは時間が掛かっても人が主導の分析を行うべきなのだ。そうすべき必然性も何度も会議の中で訴えている。
「この火山連鎖噴火をどう見られます?」
シンが質問を投げかけた。
シリマツ官吏が手を挙げた。




