第三章その三 海を渡る
「おう・・俺もそんな感じがしている。とにかくここで休息だ。比較的平な所まで少し降りて、霧が晴れるまで待とう」
キョウもそう言った。
そして、その頃、阿蘇山に到達していたランとリンも同じような感覚に陥っていた。
「おい・・リン・・異様に臭く無いか‥地熱もあるし・・」
「おう・・そうだな・・阿蘇山は活火山だと言う事だ。かなり危ない場所まで来ちまったようだな・・」
「どうする?迂回して、あっちに見える丘からこの辺りを観察して見ないか?戻るようだけど、この臭気は体に良くないと聞いた事がある」
「ああ・・硫黄も長く嗅ぐと駄目だと聞いているし、かなりきついな、これは」
ここまで順調に来ていたランとリンだが、この判断は正解のような気がした。早走りになって、ゆるやかな斜面を戻って行く。そして、再び離れたゆるやかな斜面に登り始めるのであった。
「ふいー・・きつかったな・・流石に山で走った事が無いからな」
「ラン・・あれ・・風向きが変わって、俺達に向かっていたらアウトだったかも知れないぜ?亜硫酸ガスって言うのか・・それだと思う」
「じゃあ・・阿蘇山の火口付近まで足を知らずに伸ばしていたのかな」
「この山は巨大なカルデラだと言うから、どこから噴火してもおかしくは無い。つまり、今の感じだと大噴火の跡のような気がしないでもない」
「おいおい・・それなら、危ねえじゃん・・俺達の住んでいる所ってよ、大地震も大噴火も何度も起きているって事を聞いている」
「或いは、それが天然の要塞って言う事もある・・」
リンが呟くと、
「何だって?リン、お前は今何を言った・・」
「今だから言うが、あの塔の地熱と言うか間欠泉噴爆発電の原理も聞いた時、人類は何を恐ろしい利用を考えているんだって思った。量子発電?量子衛星?何だって思った。そうだろうが?あれ以来、誰もそっちの解明もしていないしその存在理由も、うやむやだ。しかし、地熱発電が有効と分かり、発電設備が完成された。第1ドーム、第2ドームの立地も、この九州をかなりの研究施設として、日本中から優秀な人間を集めていたと聞いた時、やっぱり、何かがあるんじゃねえかってずっと思って来た」
「リン・・それは、実も俺もだ。だから、この阿蘇山の探索に非常に興味を持って来た。シンの九州南部探索には、奴は何にも言わないものの、感じるものがあるんじゃねえのかってな。だって、そうだろ?四国ルートを発見しているんだ。本来なら、まずそこだろ、探索するのはよ」
「ラン・・へ・・お前も同じ考えだったか・・なら、俺達はここを存分に探索しようぜ」
「おう!勿論よ!」




